北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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脂質は、<1>飽和脂肪酸(バターなど動物性油)<2>オメガ9(代表はオリーブ油)<3>オメガ3(魚脂のEPA、DHAやエゴマ油、アマニ油)<4>オメガ6(大豆油、コーン油など)<5>トランス脂肪酸(マーガリンなどのわずかに含有される)に大きく分類されます。

前回、<5>のトランス脂肪酸は動脈硬化症を進め、心筋梗塞などを増加させると評価がある程度定まっていること。<1>の飽和脂肪酸は日本では摂取量が多い方が脳出血や脳梗塞の発症リスクが低いという研究があるが、欧米では摂取量が多いと動脈硬化症が増えるという論文があって評価が分かれること。<2>のオメガ9は心臓病、脳卒中を減らしたという論文があり、悪い評価をする研究者はほぼいないことを紹介しました。

<3>のオメガ3は、私が知る限り、12の無作為比較試験があり、うち3つは動脈硬化症の予防に成功していますが、残りは失敗しています。成功した3つの試験はEPA、DHAで、カプセルを使って酸化を防いでいます。エゴマ油、アマニ油を使った試験はありません。

エゴマ油、アマニ油は最近、大変な人気で毎日スプーン1杯飲んでいますという人が増えています。ただ、熱や光に弱く、酸化しやすい油です。遮光していないと、商品流通段階から酸化が始まります。開封したら、早めに使い切ることが大切。幸い最近、しょうゆの酸化を防止する容器を応用した密閉ボトルを使ったエゴマ油、アマニ油が発売されています。

最後に<4>のオメガ6です。欧米では飽和脂肪酸の摂取を減らしたら、心臓病が増えたという論文が2つあります。2つとも飽和脂肪酸をオメガ6に切り替えていました。オメガ6は私たちが摂取している脂質の中心ですが、留意する必要があると主張する専門家もいます。