感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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中国・武漢市は道路が閉鎖され、銃を持った兵士と思われる人たちが配置されました。諸外国でも一部その動きが取られました。

日本では2月末に全国の学校を休校にするとの通達があり、3月2日に一斉休校になりました。学童、児童を持つ医療スタッフの仕事の継続に支障が出て、外来機能を下げざるを得なかった話を聞きました。中には対策として院内保育をフル稼働させた病院、施設もありました。

ついに4月から「緊急事態宣言」が出されました。とはいっても、武漢市みたいに駅や道路に兵士や警察官はおらず、実は移動も自由でした。「2週間みんなが頑張れば、感染は治る」という標語でした。結果的には「自粛」という努力目標で、移動や活動を低下できる日本という国はおかしいと、世界の人たちは感じたみたいです。

困ったのは、書店まで自粛してしまい医学書が買えなかったことです。デジタル化されているとはいえ、やはり紙の本の方が学習には向いていると思います。特に新研修医たちは、オリエンテーションもなくカンファレンス(研究会)も開けず、本もない状況でした。

病院の外来では、「コロナが心配だから来ない」と言っていた患者が、熱が出て「コロナじゃないか?」と外来を訪れ、防護具を着た医者に「コロナじゃないな」と言われる、“漫才”みたいな展開が繰り広げられていました。

5月6日までとされながら、緊急事態宣言は「もう少し頑張れ」と延期されました。確かに、ゴールデンウイーク明けごろから医療機関の負担は、みるみる落ち着いて来ました。緊急事態宣言は5月25日解除となり、通勤電車は数日で元に戻りました。

ただ、いにしえの軍書にありますが、お触れや陣太鼓などで1回目は士気を高められますが、2回目の効果はそれほどでなく、3回目となると効果はありません。その後警報やアラートが出されても、いまひとつ盛り上がらないです。

ただ宣言の効果はあったようです。学校を休んだため、子ども経路の感染拡大は緩やかになりました。自粛で、主に東京などから地方への拡散は防げたと思います。その一方、感染の「再拡大」が残ってしまいました。