感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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うがいは、やらないよりはやったほうがいいですが、やりすぎてもダメです。感染対策すべてに言えることですが、我々にできることは「確率を減らすこと」であって、可能性をゼロにすることはできません。宝くじも買わなきゃ当たりませんが、3枚目以上の購入はあまり当選金期待値が上昇しません。

時折、ニュースでも、そして研究所などからも「〇〇がコロナウイルスに有効」と流れますが、あまり振り回されないでください。確かに、うがい薬に含まれるポビドンヨードは強力な消毒薬です。ポビドンヨードに勝てる微生物は、ほとんどいません。ただ、その消毒薬の効果は浸漬(しんし)浸透によるので2分間程度接触しなければ完璧ではありません。うがい薬を2分間、気道に近い喉に当てることはなかなかできません。

知り合いの看護師の研究で、コロナに対してではありませんが、感染予防ではお茶うがいと消毒薬うがいでは、ほぼ効果は変わらず、継続性という点からは、お茶うがいの方がいいとのことです。小規模の研究でしたがどこも同じ結論のようです。

かつてのSARS(重症急性呼吸器症候群)のときには「白酢(しろず)」が効果があるという情報が流れ、中国・広東省の白酢価格が高騰。また現地の日本人医師も「みんなが飲んでいるので自分も飲んでしまった」という話がありました。でも、胃に相当悪い影響が出ますので、ご注意を。

紫外線に勝てるウイルスも存在しません。ただ紫外線はアルコールと同じで表面しか効果はありません。使い方にご注意ください。とにかく「〇〇が有効」情報に振り回されないでください。

手指のアルコール消毒は、この中でもっとも費用対効果の高い対応です。しかし、医療現場でもなかなか徹底できません。アルコールで手荒れする人もいます。一般的には調理する前と、口に物を入れる前に徹底すれば経口感染はかなり減ると思います。

いずれにせよ、完璧な対策などないのです。宇宙服を着ていても、生活上脱ぐ必要があり、着脱時には危険性があります。また人と人の交流がある限り、感染はやはり起きます。