感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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抗原検査は、季節性インフルエンザの検査でよく行われています。抗原検査の可否はウイルスの量に依存します。簡易キットで15分程度で判定され、陽性となればよほどのことがない限り、感染が証明されます。検査タイミングによりますが信頼感は7~8割です。

抗体検査は、はしかとか風疹など潜伏期が長い感染症でよく行われています。抗体はウイルスに対する免疫物質です。感染し、免疫が反応したことを示す指標です。信頼度は高いのですが、感染初期にはなかなか上がらず、2回検査する必要があります。現在の感染を示す「IgM」と免疫を示す「IgG」があります。過去の感染を示します。抗体はウイルスの物質抗原に対する反応なので、同系統のウイルスで陽性が出る場合もあります。

コロナウイルスの抗原検査・抗体検査系は運用活用を含めて、まだ混乱した状況です。個人的には、抗原検査はもう少し活用していいと思いますが、現場では、抗原検査が陰性でPCR検査が陽性の患者を経験することが多いらしく、やや不評です。でも抗原で検出できないレベルの方は、それほど感染力も強くないのでは、と考えます。陰圧室(細菌が外部に流出しないよう気圧を低くした病室)ではない部屋とか隔離とかの基準には使えるのでは、と勝手に考えています。

抗体検査は、玉石混交状態です。良い検査系が確立するのには時間がかかります。それに、抗体が検出できるのは感染してから数週間後です。開発が「SARS-CoV2」特異的抗体に向かっていますが、できたらコロナウイルス共通抗体が検出できれば、と考えています。おそらくこの値がコロナウイルス全般への抵抗力の指標になると考えます。特に東京都内の大多数の方には、この力があるのだと思います。

季節性コロナと新型コロナの区別をつけないといけないという意見もありますが、少なくともコロナ属であることを検出して、そこからPCRで確定診断するほうが効率がいいと思います。PCRは遺伝子を検出しているだけで、感染力があるかないか、重症化するかは分からないからです。