感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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米国ではぜんそくはコロナ重症化因子ですが、日本ではぜんそく患者の重症化は少ないとのことです。吸入ステロイドの一部が効果的といわれています。

ウイルス性肺炎全般にいえることですが、肺に炎症を起こしているのはウイルスそのものではなく、ウイルスに対する免疫反応です。免疫というと「正義の味方」的なイメージですが、ウイルス感染細胞からすれば「容赦ない暗殺部隊」です。疑わしいものを持っていたら、遠慮なく捕まって消されてしまう感じです。

免疫反応は、主に白血球の中のマクロファージとリンパ球によって引き起こされます。クロロキンはマクロファージに作用します。リンパ球はステロイドを始めとした各種免疫抑制剤で対応しますが、免疫を抑えると合併する他の感染が悪化するので、感染対応しながらさじ加減を調整する必要があるでしょう。

それでも急激な、もしくは強い炎症反応が起きてしまうことがあります。ウイルスを排除するための免疫組織が暴走する「サイトカインストーム」です。雨や風は防げても竜巻(ストーム)になってしまうと建物ごと吹き飛ばされるように、起きてしまうと手のつけようがありません。

血液内科では、抗がん剤投与後もしくは移植のしばらく後に同じような現象が起きます。この際には、やはり過剰な免疫反応を抑制対応するほかないのですが、感染症の増悪なのか見分けがつかず、判断に苦慮します。

関節リウマチやキャッスルマン病(慢性のリンパ節腫脹=しゅちょう=及び慢性炎症を特徴とする疾患群)に使われるトシリズマブは、サイトカインの1つであるインターロイキン6(IL-6)を抑えて効果を発揮します。また他の関節リウマチや膠原(こうげん)病の薬も抗炎症作用免疫抑制効果を発揮できると思います。ですが、いわゆる使いどころ、使い方は未知ですし、各薬剤に特有の副作用がありさじ加減の難しい薬です。

いずれにせよ、高齢の患者さんは合併症や持病が多く、強力な薬を使うにも身体的予備能力が低いので治療が難しいです。私自身は高齢者は重症化しやすいというのではなく、重症化したら治療し難いという感触です。