感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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新型コロナが引き起こしたことは、肺炎や血栓症や嗅覚・味覚障害だけではなく、さまざまな現象を引き起こしました。そのすべてはまだ解明されていません。

個人的な印象では、帯状疱疹(ほうしん)の患者が増えました。そして発熱外来に来た方の数人は白血病だったので、通常業務が忙しくなりました。統計的にはウイルス疾患、特にインフルエンザやヘルパンギーナ(夏風邪の代表的疾患)、そしてマイコプラズマ(細菌が引き起こす風邪症候群に似た症状)も減りました。感染性胃腸炎はあまり変わりないようです。

インフルエンザが減ったのは、新型コロナでインターフェロンが誘導され、免疫で排除された結果だとも考えたいのですが、どうも違うみたいです。マイコプラズマは、もともと五輪の年に多くみられます。今年は開催されていないためか、少ないです。

幾つかのウイルス感染症が減ったのは、その感染症の国内への流入が減ったというのが、どうも真相みたいです。そう考えるとインフルエンザはどうやら「輸入感染症」的だったとみられます。沖縄では毎年、夏もインフルエンザが流行していましたが、今年はなんとほぼゼロです。みなさんの手洗い、うがいでインフルエンザが減ったとも考えたいところではあるのですが…。

極端なことをいえば、少なくともここ10年間、インフルエンザ、ヘルパンギーナそして各種コロナウイルスなど、流行性ウイルス感染症において、我々は中国の「支配下」にあったといっていいでしょう。

国際交流をする限り、何らかのウイルスの侵入やまん延がもたらされることは避けられません。自粛行動より、「鎖国」のほうが感染対策上、最も効果を上げるでしょう。でもこのグローバル化の流れで、国際交流を止めることはできません。「江戸時代」には戻れません。

インフルエンザは、アラスカの野鳥から渡り鳥を経て中国本土に運ばれます。中国では飼育場が同じカモから豚へ、そして人間へと広がるとのことです。中華料理を作らなければ、新規発生は抑えられるかもしれません。でも、中華料理を食べられなくなるのは、私にとって我慢できそうにありません。