感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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CDCとは「疾病対策センター」のことですが、米ジョージア州アトランタにある合衆国保健福祉省所管の総合研究所を指します。

第2次大戦下のマラリア対策研究所を前身として、1946年に創立されました。世界の感染症は当然として、さまざまな疾患の分析対応をリードして来ました。消毒薬や医療機器の選択などで議論していても「CDCのガイドラインで推奨されている」といえば話が通ってしまうほど権威があります。職員数は本部と支部合わせて約1万5000人で、職種は多岐にわたります。

今回のコロナを含めて、国際的な感染症対策対応には、医療的知識はもとより経済学や経営学的判断も必要です。どんなに英邁(えいまい)な首長であっても、独力でこのような事態に対応することはできないでしょう。CDCのような専門家組織に分析を任せて、提案と対策を承認する仕組みが望ましいです。

ただ、いきなり建物を造って人数を集めても、CDCのような組織は機能はしません。感染症対策領域だけでも充実するには10年以上の歳月は必要でしょうし、横断的な組織の運営は権限やら人材やらの問題があり、なかなか難しいです。

それにいつ起こるかわからない事態に対応する組織に、経費と設備、人員を充実させることは、経営的には非常にマイナスです。感染対策は残念ながら非採算部門です。コストをかければかけるほど費用対効果は下がります。

米国のCDCがなぜ最強なのか? それは他の国や団体ではまかなえないほどの経費で運営されているからです。その費用を国家戦略として米政府が出せるからです。誤解のないように補足しますと、私個人としては日本版CDCはつくってほしい。ただし、無理やりつくっても、機能的に運営発展させることができるかは、疑問です。

その最強のCDCですら今回のSARS-CoV2の完全な制御ができていないのです。今回の対応がいかに難しいか、理解いただけるでしょうか?