■慢性疼痛脱却のコツ

体に痛みがあって治療を受ける際に、何を目標とするのか。ほとんどの方は痛みを取るために受診されると思います。

もちろん、我々医師も痛みを改善させて、元の通りに動けるようになってほしいと願っています。急性疼痛(とうつう)の場合は損傷や炎症が治れば痛みはゼロになることが大半ですが、3カ月以上痛みが続く慢性疼痛になってしまうと、なかなか完全には痛みが取れません。痛みが取れずに医療機関を転々と変えて受診する患者さんもいるようです。

ただ、いくら医療機関を変えても痛みをゼロにすることは難しいと思います。痛みが続くと体を動かさなくなり、結果として動けなくなり、さらに痛みが強くなることもしばしばあります。痛みをゼロにしようと気にしすぎると痛みに敏感になり、痛みを感じる能力が研ぎ澄まされてしまい、さらに痛みの深みにハマっていくのです。

このように慢性疼痛に対して痛みゼロを目指すことは得策とは言えません。慢性疼痛からの脱却で大切なことは、自身ができることを増やしていき、やりたいことを見つけて、それを目標に進んでいくことです。体を動かしていくことで痛みが出にくくなり、筋肉がつくことで安定性が得られ、痛い部分が守られることで痛みが軽減することが報告されています。

そうは言っても痛みが完全に取れるわけではありませんが、痛みと共存していくつもりで活動していき、痛みを感じにくくなることが、慢性疼痛から脱却するコツと私は考えています。