今、世界の外科の潮流は、身体にメスを入れる範囲を極力小さくする方向に-。心臓外科も例外ではなく、この20年ほどの間で胸を切り開くキズはどんどん小さくなり、ロボット手術(ロボット支援下手術)によって、胸に1センチ程度の小さな穴を4つ開けるだけで手術。さらに、今はその穴は3つだけに進化しました。なぜ手術にロボットが-。
私たちの子供のころ(60、70年代)は「鉄腕アトム」や「鉄人28号」といったロボット漫画が大人気で、それはロボットへの夢があるからです。それを手術に応用しようということは容易に考えつきます。特に戦争などでは、最前線でドクターが兵士を治療するのは極めて難しい。そこで、DALP(ダルパ)という米国の国防総省が、「米国にいて戦場の兵士の遠隔手術をしよう」と考えました。それは、湾岸戦争の93年ころです。
荷台が手術室になっているトラックで、天井にはロボットアームがついている。そのロボットアームを米国の手術室から遠隔操作して手術を行うのです。
米国は手術ロボットを本格的に作ろうとしましたが、戦争が終了。その技術を終わらせてはいけない、と米国の外科医フレデリックモールが買い取って手術用ロボットの製造をスタートさせました。そして、98年に市販型ロボットが誕生。99年に1号機がイタリアへ運ばれることに-。私の友人がその企業に投資していたこともあり、私はアメリカへ飛んでその1号機を見ました。その時、私は直感的に「このロボットは、外科を大きく変える!」と思いました。戦争は多くの被害者を出しますが、医療には劇的な進化をもたらします。そして、私は医療機器の進化を目の当たりにして、ロボット手術に入り込んだのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)
◆渡邊剛(わたなべ・ごう) ニューハート・ワタナベ国際病院 総長・理事長・院長。84年金沢大学医学部卒業。医学博士。心臓血管外科学会専門医。日本ロボット外科学会理事長。Best Doctors in Japan 10~21年選出。ロボット心臓手術数は年間約200例で、3年連続世界最多(19年~21年)。19年の心臓弁膜症手術数(494件)は日本最多。心臓手術の手術成功率99・6%以上を維持する。心臓病に苦しむ患者向けに無料ネット外来を開設して15年以上、相談者数は1万件以上。手術のために国内外から患者が来院している。

