乳がんの早期発見に結びつくのは、胸のしこりに気づいて乳腺外科を受診するケースが多い。ただ、そればかりとは限りません。比較的珍しいのは、乳房にしこりはないのに「脇の下のしこり」に気づいて受診するケースです。

これは脇の下のリンパ節転移で見つかる乳がんです。乳房のがんより、転移したリンパ節の方が大きくなるタイプ。「脇の下のしこり」に偶然気づいたり、「脇の下に何か挟まっている感じがする」と気づいたりすることがあります。ただし、リンパ節が腫れる原因はがんだけではなく、コロナワクチンなどを打った後に脇の下のリンパ節が腫れることはよくありますが、これは一時的なことで、心配する必要はありません。

このほかに、乳頭部(乳首)がじくじくしているのに気づいて乳がんが見つかるケースもあります。最初は「湿疹かなー」と思って皮膚科を受診。塗り薬を処方してもらって塗っていたものの改善しない。それで、皮膚科から乳腺外科を紹介されて受診する患者さんもいます。このケースはごく少数です。そのほか、乳頭から液体が出てくることもあります。透明、もしくはミルク色(乳白色)の液体が出てくる場合は、乳がんでないことがほとんどです。その液体に血液が混ざっていると乳がんの可能性が出てきます。しかし、幸いなことに多くの場合は早期乳がんです。茶色、黒色の液体の場合は、受診して検査を受けましょう。

「乳房にしこり」以外でも乳がんのケースは少なからずあります。「脇の下の違和感」「乳頭部がじくじくしている」など気になる症状に気づいたら、放っておかずに乳腺外科を受診してください。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)