「痛風」の治療は、患者さんの治療継続率が極めて悪い。私の患者さんでもそういう方は当然います。治療をやめた30代の会社員A男さんのケースを紹介します。
A男さんは健康診断で痛風の予備軍の「高尿酸血症」を指摘されて来院されました。この時の尿酸値は10mg/dlと高かったのですが、痛風発作の経験はありませんでした。また、この時点で合併症はみられませんでした。尿酸値が高いことから、尿酸降下薬の服用が始まりました。尿酸降下薬によって尿酸値は徐々に下がり、初診時から2カ月後には6mg/dl程度にまで低下しました。A男さんは数値を見て「尿酸値も下がり、症状など何もないし、薬は飲む必要はない」と自己判断で通院を中止したのです。
それから1年半後、久しぶりにA男さんが受診されました。その時、右足の親指の付け根に痛風発作が起きていたのです。A男さんは「薬をやめたのが良くなかったのですかね」とおっしゃいました。
そこからの治療は、まず痛風発作への対応薬の非ステロイド性抗炎症薬を使いました。そして、発作が改善して2週間くらいたったところで、1年半前に使っていた尿酸降下薬を再開しました。A男さんは酒好きで、毎日ビールの中ビンを2、3本飲み、体格は肥満です。「お酒は減らしましょう」と言われてもできないのです。たばこは禁煙できる方が多いのですが、お酒は極めて難しい。1年半の間は通常通りの生活だったのです。また、この1年半に尿路結石を合併しました。
高尿酸血症の治療は短期間ではなく、長期に及びます。尿酸の目標値は6mg/dl以下。そこまで下げて尿酸値を長期に良好にコントロールすることで、関節の中の尿酸塩結晶が徐々に溶けて減少するのです。薬を数カ月服用しただけでは、決して良くなりません。
A男さんは、今は60代です。痛風発作の激痛が身に染みたようで、30年ずっと治療を続けられています。治療アドヒアランスの良い患者さんだと思います。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

