日本人の死因で最も多いのは「がん」で、3・6人に1人が亡くなっています。そのがんの中で「肺がん」の死亡者数は最も多く、2024年の死亡者数は7万4469人。生活していくうえで、肺がんは極めて怖い疾患と言えます。
その肺がんの死亡者数は今でも、少しですが増えています。その死亡者数の変化で注目したいのは米国です。米国は肺がんの死亡者数がどんどん減少しています。それは、肺がんで最も有名なリスク因子の「タバコ」に対して、しっかり「禁煙」が成功したからです。日本も禁煙を取りあげていますが、思ったように禁煙は進まず、米国とは20年くらいの違いができました。それでも、30年代の後半くらいには罹患(りかん)者数は減少するだろう、と期待しています。対応をきちっと行えば、肺がんも減らせるのです。
その肺がんのリスク因子のタバコは、私たち外科医が行う手術にも影響を与えます。全身麻酔をかける手術の時に、喫煙者は術後合併症を起こす確率が高い。とりわけ高率で起こす合併症が「肺炎」です。
私どもの病院では、全身麻酔をかけて手術を受ける患者さんには、最低でも1カ月間の禁煙をしてもらうことが決まっています。それは、術後にうまく痰(たん)が出せないといったことなどが起こり、肺炎などを起こしてしまうからです。タバコは、肺がんを引き起こすのみならず、肺がんを発見できても手術対応にもいろいろ問題が生じるのです。
もちろん、死亡者の多い肺がんの治療は、日々進化しています。それを今回の連載で知り、正しく対応できようにしてほしいと思います。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)
◆神崎正人(かんざき・まさと)1993年東海大学医学部卒。医学博士。日本外科学会専門医・指導医、呼吸器外科専門医、日本呼吸外科学会胸腔鏡安全技術認定者・指導医・ロボット支援手術(RATS)プロクター、日本内視鏡外科技術認定取得者、日本ロボット外科学会専門医(国際A)。国内のRATSの先駆者、症例数は900例を超える。安全なRATSの普及のため国内外の医師を指導する。17年より現職。

