日本人の肥満者はどれだけいるでしょう。2016年の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の肥満者の割合は男性が31・3%、女性が20・6%。男性は3人に1人、女性は5人に1人が肥満者でした。それが22年には、男性が31・7%、女性が21%で、6年間でごくわずかですが、増えています。「肥満」「肥満症」に対してしっかり対応してきていますが、肥満者は減少しない。これには「スティグマ」も関係しているのです。
スティグマとは、古代ローマ時代に奴隷に付けた烙印(らくいん)のこと。烙印を押して差別する、ということです。要するに、太った人は「だらしない」、「仕事もいい加減」、「食いしん坊」「ダメな人間」などときめつけてしまいます。それが「周囲から受ける差別的スティグマ」です。
それに対して、「自己スティグマ」もあります。これは、肥満になっている自分自身を“だらしない人間”と低く評価するのです。だから、「太っているからいろんな病気になってしまう。だらしない生活を改善すれば病気は治るから」、と考えて病院に行かないのです。周囲からは病気を治す意志がない、と見られています。
病院を受診したとしても、「あなたは太っているから病気になるので、やせてから来なさい!」、と言われたりするのです。肥満の人は自分でやせようという気がないように見えるので、医師も看護師も「体重減少の指導をしても無駄だ!」と思う医療側のスティグマもあります。
このようなことがまかり通っている現状があるので、今、私たち肥満症専門医は「肥満症はやせるべき病気なので、肥満症として治療をしましょう、というのが本来の姿ですよ!」ということを訴えています。肥満症の治療には、このような医療の問題や社会的問題があるので、私たちはそこを改善したいと動いています。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

