シーズン開幕前の2月の連載で、優勝予想をテーマに書いたが、両リーグともに予想は外れた。なぜ、当たらなかったのか。いくつかの原因があるが、私なりの検証をしるしていく。

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セ・リーグは、3連覇がかかった巨人を挙げた。他チームには少々失礼な話かもしれないが、大きな理由は他チームとの戦力評価である。巨人は投手、野手の層が厚く、誰かが故障しても埋めるだけの戦力を持っていると感じた。

投手陣でいえば先発、中継ぎ、セットアッパー、クローザーと各役割がはっきりし、人も豊富。エース菅野智之の勝ち星を入れなくても優勝するだろうと読んだが、移籍すると想定された菅野が残留し、優勝は確実に思えた。

力投する巨人菅野(2021年10月13日撮影)
力投する巨人菅野(2021年10月13日撮影)

ところが、野球は人間がやることだから、さまざまなことが起こってくる。中川皓太、デラロサら勝ちパターンのリリーフが一時離脱。野手でも坂本勇人が故障で一時戦列を離れ、スモーク、テームズと期待の新外国人は帰国した。丸佳浩も不調で2軍に降格するなど、誤算が生じた。世間では、9月から取り入れた先発陣の中4日、5日起用による不調が失速の原因の1つではないかと言われていると耳にした。個人的な意見だが、間隔を詰めることは想定の範囲内。問題なのは起用法ではなく、間隔を詰める起用に至るまでの準備は万全だったかということである。

首脳陣は開幕前のキャンプ、オープン戦で9月から間隔を詰めることを想定し、投げ込みや体に負荷をかける練習をさせていたか。中6日から中5日へ、中5日から中4日へ。たかが1日に感じるだろうが、されど1日。心も体も準備が整わなければ、プロの世界で結果は出すのは難しい。

開幕前、巨人はどちらかといえば投手力のチームではなく、多くの点数を取れる攻撃力のチームだと分析した。野球はチームスポーツと言われるように、カバーし合えるかが大事な要素となるが、ここまで打てなくなるのは誰も予想できなかっただろう。

楽天田中将(2021年10月25日撮影)
楽天田中将(2021年10月25日撮影)

パ・リーグの優勝予想は、楽天を挙げた。大きな決め手は、ルーキーの早川隆久の存在だった。早大時代の投球を見た時に、投手としての全ての要素を持ち合わせていると感じた。新人に大きな期待を寄せるのはタブーだが、彼の能力、精神力があれば乗り越えられるだろうと判断した。

私の考えでは、勝敗は投手力が大きなカギを握る。その点でいえば、楽天は先発ローテの実績と安定性、頭数、クローザーの松井裕樹の実績ともに申し分なし。そこに、当初は計算になかった大投手の田中将大が加わったのだから、確率は高いだろうと考えた。

先発投手の白星は打線との兼ね合いもある中、早川は9勝を挙げ、期待に応えた。その一方で、涌井の不調と松井の故障離脱が大きく響いた。タフな涌井はイニングを計算でき、チームに安心感をもたらす存在。松井の不在で後ろが安定せず、チーム全体が不安な戦いを強いられた。

本命と読んだ両チームを上回って、25日現在、優勝マジックを点灯させているのはセ・リーグはヤクルト、パ・リーグはロッテである。お世辞にも、開幕当初の下馬評はそれほど高くはなかったが、この2チームには、ある共通点が見られた。(つづく)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ) 1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から19年まで再び巨人でコーチを務めた。