今季から導入された新ルール「二刀流選手登録」は、エンゼルスにとって大きなアドバンテージになりそうだ。

ルールの詳細は、1シーズンに少なくとも20投球回を記録し、野手かDHとしてシーズン20試合以上に先発して1試合につき3打席以上立った場合「二刀流選手」として登録できるというもの。しかも二刀流としての登録を維持するには、この条件を毎年クリアしていかなければならない。大谷の出現でMLBでは二刀流を目指す選手が増えたが、この条件を満たせる選手はそういない。

レイズのブレンダン・マッケイ(24)は1年目の昨季、13試合に登板し49イニングを投げているため投手としての条件は満たしているが、野手としては7試合の出場にとどまり先発は3試合のみ。そのうち3打席以上立ったのは1試合だけだ。レイズはマッケイを今後も二刀流として育てていく方針だというが、現状では投手としては大きく期待されているものの、打者としてはまだ未知数。二刀流の打撃条件を今季クリアするのは、かなりハードルが高そうだ。もう1人の二刀流、レッズのマイケル・ロレンゼンは救援投手として5年連続50イニング以上を投げているが、打者としては昨季100試合出場するも先発出場は6試合、3打席以上の試合は5試合のみ。成績は打率2割8厘、1本塁打、6打点に終わっており、打撃のレベルアップをしなければ20試合以上の先発は厳しい。二刀流にチャレンジした経験があり今オフにレッズに移籍した強打の内野手マット・デービッドソンのようなケースでは、今季から投手登録していない選手が登板することが難しいルールに変わったため、二刀流を目指しづらくなった。現状から考えると、大谷以外に二刀流登録が可能になる選手はあと数年は出てこないのではないか。つまり、この“特権”を利用できるのは、しばらくはエンゼルスだけというわけだ。

二刀流登録と同時に、今季から投手登録の人数制限(恐らく13人)が導入されるため、チーム編成において二刀流の存在意義は大きい。大谷が投手にカウントされないため、エンゼルスは実質的に1人多く投手を保有できることになる。現状では投手力に不安のあるチームであるため、人数で他を上回ることができればアドバンテージになる。しかも大谷は開幕から二刀流登録が可能となりそうなので、DHとして出場しながらマイナーで投手としてリハビリ登板ができる。新ルールがことごとく、大谷を抱えるエンゼルスにとって有利に働いているが、このルール作りはエプラーGMが1年前からMLBに働きかけ、根回しをして実現にこぎ着けたという。これに関しては同GMの大功績といえそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

エンゼルス大谷翔平
エンゼルス大谷翔平