昔から球界では「投手は9番目の野手」と言われますが、攻撃力アップに貢献する場合、「9番目の打者」と言い換える方がいいのかもしれません。5月11日のドジャース-メッツ戦では、先発した前田健太投手が、メ軍の「9番目の打者」に、手痛い一撃ならぬ、「二撃」を喫しました。主軸打者を抑えた一方で、メ軍先発のノア・シンダーガード投手に、先制ソロ、逆転3ランと、2打席連続で被弾。その4失点で敗戦投手(2敗目)になってしまいました。
打撃を得意とする投手は、メジャーにも少なくありません。毎シーズン後、ポジジョンごとに攻撃力優秀な選手が「シルバー・スラッガー賞」として表彰されますが、ナ・リーグでは投手も含まれます。過去最多受賞者は、99年から5年連続で選出されたマイク・ハンプトン(アストロズなど=現マリナーズ・ブルペン投手コーチ)。99年に22勝で最多勝を獲得し、通算148勝を挙げただけでなく、01年には年間7本塁打を放つなど、「強打の投手」としても知られました。
投手の歴代最多本塁打記録は、1930年前後に活躍したウェス・フェレル(タイガース)の通算38本。2000年以降では、カルロス・ザンブラーノ(カブスなど)の24本塁打(史上7位タイ)が、記憶に新しいところでしょうか。
現役最多は、過去2年連続で「シルバー・スラッガー賞」を獲得しているマディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)と、ヨバニ・ガヤード(オリオールズ)の通算12本塁打。左投げ右打ちのバムガーナーの場合、今年4月9日にサイヤング賞3回の左腕カーショー(ドジャース)から特大本塁打を放つなどパワー十分で、26歳の年齢からもさらに本数を伸ばすことは確実と言われています。過去には、マット・オーイングス(ダイヤモンドバックスなど=現独立リーグ)が代打で2本塁打を記録した例もあり、投手の打力を軽視すると、痛い目に遭うことにもつながります。
今回、投手に2被弾した前田は、決して相手を軽視していたわけではないでしょう。実際、日米通じて投手には「初被弾」でした。ただ、メジャーには、それだけパワフルな「9番目の打者」がいるという現実を再認識したはずです。
前田自身、4月6日のデビュー戦で初本塁打を放った好打者だけに、悔しさもひとしおだったようです。今後は、マウンド上で相手打者を抑えるだけでなく、「打たれたら、打ち返す」ことで、白星をつかみとるようになる? かもしれません。
【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)



