ドジャースがFA市場最大の目玉だったカイル・タッカー外野手と4年総額2億4000万ドル(約372億円)、大谷翔平投手に次ぐ歴代2位の年平均6000万ドル(約93億円)で契約合意しました。メッツ、ブルージェイズとの争奪戦を制したのには、正直ビックリしました。
今年ワールドシリーズ3連覇を目指すドジャースにとって、主力選手たちの高齢化、外野陣の打力、スピード、守備力の低下が課題でした。昨年チームの外野陣はメジャー26位の出塁率2割9分9厘、わずか22盗塁に終わりました。そこで目を付けたのが、今月17日で29歳になったばかりのタッカーです。
2018年に強豪アストロズでメジャーデビューし、昨年はカブスで主に右翼手としてプレーしました。24年アストロズで驚異の出塁率4割8厘を残し、パワーとスピードも兼ね備えた“30-30”型プレーヤー。それに加えて22年ゴールドグラブ賞に輝く名手でもあり、タッカーの加入により外野の問題が一気に解消されそうです。
近年ドジャースは23年オフの大谷以降、本格派右腕タイラー・グラスノー、日本のエース山本由伸、サイ・ヤング賞2度受賞のブレーク・スネル、「令和の怪物」佐々木朗希、今オフはメッツから球界最高のクローザー、エドウィン・ディアスにタッカーと大物を次々に獲得。それで思い出すのがおよそ半世紀前のヤンキースです。
1976年にFA制が導入されると、栄光から遠ざかっていたヤンキースの独裁的オーナー、ジョージ・スタインブレナー氏が「札束攻勢」と非難されながら大物選手と次々に契約。その結果、77、78年と2年連続世界一に輝き、「カネで買った最強チーム」などと、やゆされながらも名門チームを見事復活させました。
ちなみに、77、78年のワールドシリーズでヤンキースに敗れたのは、いずれもドジャースでした。当時、西の名門はオマリー一族による球団経営のもと、チーム強化の第1歩であるスカウティングとファームでの若手育成に重きを置き、あえてFA市場に参入しない方針という対照的なチーム作りでした。
その後もヤンキースは金満ぶりを発揮しました。2002年オフにレッドソックスが、キューバ代表のエース、ホセ・コントラレスと契約寸前で因縁のライバルにさらわれました。それに憤慨した当時のラリー・ルッキーノ球団社長が「ヤンキースは悪の帝国だ」と悪態をつきました。以来、名門球団は「悪の帝国」と呼ばれるようになりました。
ところが、最近ヤンキース、ドジャースという東西名門チームの立場が逆転しました。10年のスタインブレナー氏の死後、昔のような勝利への執念が感じられないヤンキースに対し、今やドジャースが圧倒的な資金力でスター選手を次々と獲得。今オフ、さらに「悪の帝国」批判が強まって来ました。
それでも、最近のMLB公式サイトによる調査を見ると、ファームの充実、投手育成、打者育成どれも30球団中1位の評価。これこそがドジャースの伝統的強さであり、オマリー一族の時代から続く「勝利の伝統」は脈々と受け継がれています。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)




