プロ注目で苫小牧駒大エースの最速155キロ右腕、伊藤大海(4年=駒大苫小牧)が今季初戦に先発し、旭川大を相手に被安打6、11奪三振完封で20年初の公式戦を飾った。春季リーグ戦は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止。昨秋以来約1年ぶりの公式戦で、初回にいきなり最速150キロをマークするなど、ドラフト1位候補として、貫禄の投球を披露した。

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伊藤がマウンドに仁王立ちした。最初の打者を、この日最速となる150キロの直球で二飛に打ち取ると、続く打者を2者連続の空振り三振に切ってスタート。「序盤に、自分のペースで入れたので、その後も乗れた」。この日は、甲子園で高校生合同練習会があり、視察はプロ1球団にとどまったが、誰が見ていようが、いまいが関係ない。7回2死二塁のピンチでは、自慢の直球で三振を奪い、ジャンプし、くるりと反転しながら、喜びを表現した。

22日の開幕節の相手、北海道教大旭川が大学の事情で8月中は参戦出来ず、2戦連続不戦勝。初戦が1週間ずれ込んだ上に、29日の旭川大戦は天候悪化で中止となった。8日遅れの“開幕”にも「焦らず、やれることをしっかりやろうと考えた。準備に時間を費やせた。少し待った分、初回は気持ちも入った」と前向きに話した。

31日が23歳の誕生日。22歳ラスト登板を飾り、自ら前祝いした。駒大を中退し苫小牧駒大に再入学。回り道しながら、4年目を迎えた。「22歳はコロナ禍で我慢、我慢が続いた。でもその中から忍耐力も学んだ。いかに切り替えてポジティブに考えていけるかが大事」。主将として迎えるラストシーズンに「こういう年になり、選手1人1人の思いも強い。最後にみんなで笑って終われるように」と、リーグ制覇からのプロ入りを思い描いた。

ちょっぴり大人の投球も試してみた。「常に100%ではきつくなる。8割の力で9回しっかり投げることが理想。今日は体も気持ちもセーブしながら、いいボールを投げることができた」。昨秋まで直球を生かすための“アクセント”程度だったスプリット、ツーシームを多用し11奪三振。「いろいろ投げ分けられる自分も出して行けたら」。新たな引き出しを開けて見せることで、さらに自身の価値を高めていく。【永野高輔】

▽苫小牧駒大・大滝敏之監督(66)「うちは初戦なので、どうなるかと思ったが、(伊藤)大海が安定した投球をしてくれたのが勝因。他の4年生も、よく頑張ってくれた。1つ勝てたのは大きいが、次が大事。ミスなく戦えるようにしたい」