西武は30日、育成契約4年目を迎えていた是沢涼輔捕手(26)を支配下登録すると発表した。背番号は「65」に変更となる。

前日29日には巨人から若林楽人外野手(28)を金銭トレードで獲得し、編成期限1日前のこの日、支配下選手枠70人の最後の1枠に是沢を選んだ。

逆転Vへの道筋を考えれば先発、リリーフともに「万全」まではいかない。広池浩司球団本部長(52)も西口文也監督(53)も投手出身だ。1人でも多くの投手を、と考えても不思議ではない。それでも捕手を選んだ決断に深みがある。

2つの背景が考えられる。まずは純粋に1軍出場可能な捕手の増員だ。古市がFAの人的補償でDeNAに移籍したことで、春季キャンプ以降は支配下捕手6人で臨んでいた。高卒2年目の龍山はまだ育成段階で、キャンプ中にはベテラン炭谷と牧野がそれぞれコンディション不良に。古賀悠、柘植、ドラフト1位小島しか1軍メンバーとして想定できない状況から始まり、今に至る。

3人それぞれが機能しているものの、シーズン3分の2を消化し夏場で疲労蓄積もある。失点がやや増えている実情もあり、ここでの捕手強化は選択肢の1つといえる。球団がオフから技術改善に注力するフレーミング技術は、是沢はかねて球団内では高い水準にある。春季1軍キャンプを完走したことで、1軍投手陣とのコミュニケーションも取れている。

もう1点、是沢はかねて人間力も高く評価されての入団だった。高校(健大高崎)でも大学(法大)でも控えながら、圧倒的な練習量と野球への注力で、1軍戦力の1人として評価を得るまでになった。大卒4年目ながらマイカーを購入せず、昨オフの退寮後も自転車で通勤。この日行われた2軍練習でも開始の1時間近く前に現れ、1人で集中力を高める姿があった。

球団は人財育成部門に近年、重きを置く。30人超まで急増した育成選手はソフトバンク、巨人に次ぐ規模だ。先日は国際戦略の一環でインド出身の右腕モーレを獲得。シーズン91敗というどん底の24年から立て直すため、優勝争いと育成を両立できる環境作りに投資を惜しまない。

アマチュア時代の実績が相対的に皆無に等しい是沢が、3軍や2軍で試合出場を重ね、野球での信頼を積み上げて支配下契約を勝ち取る-。かなり難易度の高いミッションゆえ、この事実1つだけをもってしても、選手育成能力をはじめ球団の“能力”を多角的に示せることになる。事象の価値が最大限に深まるかどうかは、この先の本人の1軍での活躍次第。とはいえ長い目で見れば、是沢の昇格は想像を超えるプラスをもたらす可能性を秘める。【西武担当=金子真仁】