2場所ぶりに三役に復帰した小結逸ノ城(22=湊)が、結びの一番で横綱白鵬(30)を突き落としで破った。過去4連敗中だったが、わずか2秒足らずで初勝利し、初日では3年ぶりに土をつけた。場所前は泥まみれになりながら稽古をつけてもらった恩を、土俵の上でしっかり返した。
満員御礼の垂れ幕がかかるつり屋根の下で、逸ノ城は座布団が舞う光景を眺めた。「うれしいっすね」。48本の懸賞(144万円)は、初めて両手で受け取った。支度部屋に戻ると笑顔を見せ「思い切りいこうと決めていました。前に出て勝てば、下がって勝つのとは全然違う」。5度目の挑戦で、大横綱を倒した。
成長の証しを見せた。「かち上げて、突き放していこうと思った」という立ち合いは失敗し、白鵬に左前みつをがっちり取られた。だが、ここからが違う。4度の敗戦から「右を中途半端に差したら、いつもみたいになるんで」。差しかけた右を素早く抜き、小手に巻くように突き落とし。相手は思わず手をついた。「横綱が速かったんで。全然自分の相撲じゃないので、たまたま勝った」と言うが、12年夏場所の安美錦以来3年ぶりとなる初日の白鵬戦勝利。3横綱全員から勝利を挙げ、優勝争いに混戦の様相を作りだした。
春巡業中、稽古をサボり気味だったことを師匠の湊親方(元前頭湊富士)から厳しく注意された。場所前は白鵬から何度も転がされ、体中傷だらけ、泥だらけになりながら稽古した。おかげで207キロの巨体でも動きは鈍らず、1週間前から約1時間のウオーキングも始めた。「自信を持っていきたい。もう勝ちたいっすよ」。初対戦だった昨年秋場所では夢の存在だった白鵬。その壁を乗り越え、最高の形で恩返しした。
春場所は一緒に来日した照ノ富士の活躍に押され気味だったが、これで名誉挽回。湊親方も「(上手を取られて)あそこで時間がたっていたら負けていた。思い切りやったんじゃないですか」と褒めた。この日は母の日。故郷にはないが「(母は)いつもテレビで見てくれている」という。母国では国民の8割に認知されるという人気者。この活躍が、一番の親孝行になった。【桑原亮】

