西前頭筆頭の嘉風(33=尾車)が大関豪栄道(29)まで打ち破った。1度は引きかけたが、師匠の尾車親方(元大関琴風)の教え通り、前に出て押し倒し。昨年秋場所(反則勝ち含む)に続いて、平幕で史上初の2度目の2横綱2大関撃破を果たし、4勝目を挙げた。

 立ち合ってすぐ、嘉風の手が相手をはたこうとした。その瞬間、師匠の言葉がよぎった。「どんどん前に攻めろ!」。ほんのコンマ数秒。考える間はない。だが「思い出した」と真顔で言う。体も動いた。教え通りに攻める。一方的に突いて、最後は押し倒し。「自分でもびっくり。ああいう展開になるとは思っていなかった」。最後の横綱、大関戦を、完勝で締めた。

 尾車親方の言葉。3日目に2つ目の金星を取った後に諭されていた。鶴竜を攻めて倒しているのに…。「ダメな相撲だったかなと思った」という。だが、そこでへそを曲げず、意味を考えるのが今の嘉風。「師匠は時に重要なことを言う。何か意味があるんだろうと思った」。考えて、安易に引いて勝つなという意と解釈した。それが、ここ一番で出た。「思い出して前に出れました」と感謝した。

 平幕力士の2度目の2横綱2大関撃破は、年6場所制となった58年以降、史上初。「夢みたい。自分がやっている感じがしない」と、白鵬撃破に始まった夢見心地は、いまだ覚めない。

 3人目までの撃破は、愛夫人(36)ら「あげ家族」の力。この日も「行く」と聞かされていた。だが、来ていなかった。つまり、自分の力で4人目を倒した。秋場所を前に「遊園地で目玉のアトラクションに並んでいる感じ」と漏らしていた。そのワクワク感を、目いっぱい楽しんでいる。「常にベスト。常にピークです。明日がピークで、あさってはもっとピーク」。33歳の絶頂期は、まだ続く。【今村健人】