新十両の宇良(23=木瀬)が、得意のアクロバチックな相撲で国技館を沸かせた。東幕下2枚目の天空海(25)に対し、一瞬反るような形になり大技への期待を抱かせた。勝負の瀬戸際で、前転宙返りするように執念の下手投げを決め、2勝目を奪取。史上4位の所要7場所で関取になった新星が、ファンを楽しませた。

 十両の土俵で、宇良が躍動した。23年ぶりの大技居反りや、9年ぶりの伝え反りへの期待を抱かせ、執念で2勝目をつかんだ。軍配が自身に上がったことを確認した小さなヒーローは「よしっ」とうなずいた。

 まさに「宇良劇場」だった。立ち合いで天空海(あくあ)の右足を取りに動く。新十両4日目で最も低く立ち、手を伸ばすがつかめない。右に回り込みながら突っ張ってきた相手の攻めを、今度は低い姿勢でかいくぐる。続けて、懐に潜り込み左下手をつかんだ。

 その直後だ。天空海が左からすくい投げを仕掛けた時に、一瞬反るような形になった。「下から上に、押し上げたかった」と宇良。居反りか、いや伝え反りか! 館内にどよめきが巻き起こる。だが、相手の小手投げでまたも潜る形に逆戻り。それでもその投げをしのぎ、左から渾身(こんしん)の下手投げ。「腰を割って(相手の上に)乗らないように、足の位置に気をつけた」。しっかり右足で踏ん張り、土俵につきそうになった頭も亀のように引っ込めた。最後は前転宙返りのようになりながら、投げ勝った。ちょんまげではなく、背中と尻についた砂こそ、粘りに粘った勝利の証しだった。

 173センチ、127キロと小柄でも、抜群の身体能力がある。それは相撲より先に始めた体操で培った。当時4歳の宇良は泣き虫だった。幼稚園から1人でバスで帰る際は、いつも大泣き。見かねた母信子さん(49)は仕事後に迎えに行けるように、園内の体操教室に毎日1時間通わせた。マット運動や跳び箱を続け、小学校に入るころには側転や変則気味のバック転もマスター。相撲、レスリングとともに小6まで続けた体操も、今に生きている。

 相手より先に手をつかない執念も、幼少時から磨かれた。「昔から手をついて負けたら、すごく怒られたんで」と宇良は振り返る。「自分で勝負を決めたらあかん」「負けても印象に残る相撲を取りや」が母信子さんの口癖だった。ファンを魅了したアクロバチックな相撲で、星を五分に戻した宇良は「もっと勝ちたいです」。自分らしさ全開で、貪欲に勝利を追い求めていく。【木村有三】

<過去に宇良が出した珍手>

 ◆撞木(しゅもく)反り 低く構えて相手の懐に飛び込み、頭を相手の脇の下に入れて肩の上に担ぎ上げ、体を反らせて後ろに落とす大技。たすき反りにも似ているが、撞木反りは相手と自分が丁字形になる。日本相撲協会の公式記録では、史上1度も記録されていない。宇良は大学1年の11年、第89回全国学生相撲選手権大会団体戦で記録。

 ◆伝え反り 相手の差した手の手首あたりをつかみ、脇の下をくぐりながら体を反らせて、その圧力で倒す技。十両以上では07年九州場所10日目に、十両里山が栃乃花に決めた。宇良は大学3年の13年、第51回全国選抜大学・実業団対抗和歌山大会で記録。

 ◆居反り 立ち合いに低く飛び込んで相手の懐に入ったり、相手に上からのしかかられた時に、しゃがみ込むように腰を低く落として両手で相手の膝のあたりを抱えて体を反らせ、後方に投げ落とす大技。十両以上では93年初場所12日目、十両智ノ花が花ノ国に決めたのが最後。宇良は大学3年の13年、第89回全国学生相撲選手権大会個人戦などで決めた。