恋の物語であり、生き方を問う映画でもある。瀬戸内海の小さな島の高校に転校してきた櫂(かい=横浜流星)と、地元育ちの暁海(広瀬すず)。「男にだらしない女の息子」と「父親が浮気している家の娘」として周囲の目にさらされる2人は「同志」として心を通わせ、恋に落ちる。やがて櫂は上京し人気漫画の原作者となり、暁海は母の世話をしながら刺繍(ししゅう)作家を目指す。互いを照らし続ける15年を描く。

夜行バスで声を殺してすすり泣く暁海に、深い孤独を感じた。櫂の絶叫にも胸を揺さぶられる。凪良ゆう氏の原作「流浪の月」(22年)で共演し、力をつけてきた2人が、愛し合いながらすれ違う心情を切なくも熱く表現する。

今回も原作は本屋大賞に輝いた凪良氏の小説だ。横浜と10年来の盟友、藤井道人監督が映画化した。原作に魅了された横浜が凪良氏に手紙で直談判した。

「正しさなんて、だれにも分かりません」という恩師の言葉が胸に残る。世間の「正しさ」に縛られず、2人は生き方を選ぶ。瀬戸内の夜の海が映るラストの美しさは心にも灯がともる。見終わった後、「大事な人」と「好きなこと」を静かに考えたくなった。【松浦隆司】

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