文章を書いていて“捨てるところがない”というタイプの取材対象者がいる。
記者になってから、先輩に「見出しが立つか考えろ」「見出しになる言葉を引き出せ」と口酸っぱく言われてきた。
人間は人それぞれ。話し上手な人がいれば、口下手な人もいる。冗舌なわりに同じことを3回しゃべっているだけで中身がすっからかんなんて人もいて、こういうパターンは見出しが立たずに往生する。もちろん、取材内容によっても状況は違う。先方が進んで売り込みたいときは冗舌だし、謝罪会見ともなれば聞かれて答えにくいことを引き出すのが記者の腕とも言える。
“捨てるところがない”人とは、こちらが何か仕掛けなくても話を聞いているだけで勝手に伝えるべきことがどんどん膨らんでいくタイプ。明石家さんまがそうだし、記者自身は直接インタビューしたことはないが、ビートたけしもそのタイプだそう。
最近、取材したタレントにもそのタイプの人がいた。SUPER EIGHT村上信五だ。
先日、読売テレビ制作の日本テレビ系新情報番組「ニュースto」の制作発表会見に参加した。以前、近畿大で講義をしたときも取り上げたが、とにかくどんな質問に対しても、返答がウィットに富んでいて、聞いている人を飽きさせない。「あれは聞くな、これは聞くな」「質問は作品の内容に限る」と何かと質問に制約も多い中で「何でも聞いて」というスタンスを崩さないのは、大御所芸能人とも共通している。
会見の冒頭でも「なるべくすぐに書いて出せるようなコメントを心がけたい」とあいさつ。気遣いが表れていた。質疑応答は約50分行われたが、自身の政界進出を問われても、本気とも冗談とも取れるように応じたり、所属するSTARTO ENTERTAINMENT社を自虐的に持ち出すなど、記者に対して「こう言ったらウケるんでしょ?」「こう返したら書きやすいでしょ?」と瞬時に反応してくれるので、報道陣との会話も弾んでいた。
字数に制限のある新聞では話のキモ、最もおもしろいところに特化して書かなければいけないので、どうしても捨てないといけない部分が出てくるがネットでは制限がない。個人的には村上を主語にした原稿を4本にまとめたが、他社には7~8本原稿を書いている記者もいたので、同じようにそれだけ捨てるところがないとの判断だったのだと思う。
村上は金曜MCを務めることになっており、9日の放送でMCデビュー。過去に共演歴のあるアナウンサーを間違えるご愛敬も見せながら、無難なスタートを切った。前番組の「情報ライブ ミヤネ屋」MC宮根誠司から意気込みを問われた際には「初の報道番組のMCになりますけど、2カ月くらいでクビにならないように皆さんと協力してやらせていただきたい」と話していたが、30年の芸能生活で鍛えられた村上流の気遣いとトーク力で長寿番組を作っていくに違いない。【阪口孝志】



