大阪府歯科保険医協会が、殺菌効果のあるポビドンヨード配合のうがい薬が新型コロナウイルス感染対策に効果があると発表した大阪府の吉村洋文知事に、異例の抗議文を突きつけたことが7日、分かった。

同協会の小澤力理事長は抗議文の中で「医療現場と府民を混乱させ、歯科医療機関が医療用のうがい薬の入手が困難になっている」と、厳しく指摘している。吉村氏はその意義を強調するが、うがい薬問題の波紋は広がるばかりだ。

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吉村知事に対して、歯科医療の現場から手厳しい声が上がった。6日付で送付された抗議文のタイトルは「医療機関と府民を混乱に陥れたことを真摯(しんし)に受け止めよ」。小澤理事長は、4日に「ポビドンヨードを含むうがい薬に新型コロナウイルスに対する効果が確認された」と発表した吉村知事の会見内容を、強く批判した。

同協会は、大阪府内の歯科開業医4184人が会員。抗議文は「そもそも、うがい薬に効果があるかどうかについて、知事の不用意な発言は、医療現場と府民に混乱をもたらし、治療にも支障をきたしている」と指摘。「うがい薬が市場から消えてしまい、最も多く使用している歯科医療機関でさえ手に入らなくなっている」と、現場の悲鳴を訴えた。

歯科医療では、抜歯治療の感染予防でポビドンヨード配合の薬を使用している現実がある。「歯科医は学校時代に、抜歯時の感染予防としてポビドンヨードなどの使用を学びます。抜歯治療時のルーティンです」と、東大医学部顎口腔(こうくう)外科研究生の榊原康智氏(榊原デンタルクリニック院長)は解説する。

ポビドンヨード配合のうがい薬は、4日の吉村知事らの会見中から全国のドラッグストアなどで売り切れが続出。「再入荷は未定」という店が多く、小澤理事長は「歯科医療機関が入手ができなくて困っている、との相談が相次いでおり、入荷できないため、治療で必要な患者に行きわたりにくくなっている」と、現場でも入手に支障が出ていることを訴えた。

吉村知事は、新型コロナウイルス対策への対応で知名度を全国区に上げた。抗議文はその「時の人」に、「住民の命と健康を守るべき立場を踏まえて、慎重に発言するよう強く求める」と締めくくった。医療の現場からの反発の声は高まっている。大阪ではこの日、255人の新型コロナウイルス感染が確認され、過去最多を2日連続で更新した。【大上悟】