輸入牛肉の価格高騰を受けて、庶民の味方でもある牛丼チェーン大手4社が昨年、牛丼・牛めしを値上げした。並盛1杯300円を割る時代もあっただけに、お財布にも厳しい状況となっている。その牛丼店が昨年末から次々に鶏肉の新規&復活メニューの販売を始めた。どうやらチキンは好調のようだ。なぜ、牛丼店は今、鶏肉料理に走っているのか?

日本人の国民食ともいえる牛丼。昨年末からは鶏肉メニューが新たに登場し、純粋な牛丼店とも言えなくなってきている。

今年4月末で、牛丼チェーン大手4社の店舗数は「すき家」1940店、「吉野家」1190店、「松屋」979店、「なか卯」550店だ。2013年ごろまでは、大手4社の牛丼並盛が1杯300円を切る値下げ競争も展開された。2015年以降は各社300円台で落ち着いていた。

輸入牛肉の高騰化で2021年夏、なか卯が和風牛丼の価格を上げた。当時、かき揚げ丼を一部店舗で新規メニューとして登場させ、その際に和風牛丼も50円値上げし、並盛は430円となった。全店舗で完了したのは11月だった。

他社も松屋が9月28日、吉野家は10月29日、すき家は12月23日にそれぞれ牛丼・牛めしを値上げした。並盛で300円台は松屋の380円だけで、他3社は400円台となった。

牛丼の値上げと歩調を合わせるように、鶏肉メニューが各社から発表された。12月1日、すき家が鶏もも肉1本を焼いた「ほろほろチキンカレー」を新商品として販売開始。統括するゼンショー広報室では「ほろほろの販売当初は完売する店が続出するほどの人気で驚いた」と話した。すき家全店の売上高も2021年11月の前年同期比は104・6%、同12月は118・2%だった。同広報室では「間違いなく『ほろほろ』効果で売り上げ増になったと分析している」とした。

今年4月7日、なか卯が1994年から看板商品とする親子丼の肉を大きく切り分けリニューアルし、並盛の肉2倍量の特盛を新たに設定した。その12日後の4月19日には吉野家が10年ぶりに「新親子丼」と銘打った親子丼を新メニューに加えた。吉野家広報室は「広く愛される親子丼の開発を10年継続していた。全店舗で均一な味・調理を実現することが非常に難しかった」と話した。なか卯もグループを統括するゼンショー広報室では「なか卯の看板は親子丼です。吉野家さんが参入することで親子丼が人気の高さが証明され、注目されることは大歓迎です」と余裕を見せた。

松屋は5月2日に春季に期間メニューとして登場させている「ごろごろ煮込みチキンカレー」(通称・ごろチキ)を定番化させた。ごろチキの評判について松屋総務・広報グループでは「待ってました!レギュラー化ありがとう!」「レギュラー化、エイプリルフールかと思ったくらい激アツ」など手紙やメールが寄せられているという。【寺沢卓】