藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将=19)が永瀬拓矢王座(29)の挑戦を初めて受ける、将棋の「第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第3局」(産経新聞社、日本将棋連盟主催)が4日、千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」で行われた。午前9時から始まった対局は、先手の藤井が午後7時14分、145手で永瀬を下した。これで対戦成績を2勝1敗として、3連覇まであと1勝とした。第4局は7月17日、地元名古屋市「亀岳林 万松寺」で行われる。

1勝1敗で迎えた、改めての「3番勝負」。藤井は「大事な1局」と位置付けていた。125手目の先手8二とまで、藤井はじっくり腰をすえて自玉の安全を確認していた。各4時間の持ち時間のうち、藤井は残り23分、永瀬2分。1手間違えばどうなるか分からない際どい状況にも、残り時間を使って冷静に対応した。

131手目、攻めが回ってきた。先手2五桂で手掛かりをつかむ。続く133手目の先手3三銀から19手詰めを読み切った。

角換わり腰掛け銀からお互いの研究手筋か、昼食休憩まで73手も進むハイペース。「考えていた展開の1つだった」と振り返る。接戦になっても永瀬に粘る余地を与えない。「自信のない局面もありましたが、上に玉が逃げて少し余していると思いました」。勝ちを読み切っていた。負ければ、タイトル戦の途中で初めて黒星先行という不利な状況に追い込まれる。勝つと負けるとで大違いの1局で、しっかり白星を挙げた。

一昨年の夏、タイトル戦という大舞台に初めて登場し、棋聖・王位と連続で獲得した。昨年の夏、2つとも防衛した上、叡王・竜王と奪取し、今年2月の王将獲得、最年少5冠まで突っ走った。先月28、29日の王位戦7番勝負は開幕戦こそ落としたが、今夏もここから巻き返せるか。「スコアを意識せずにしっかり準備して臨めれば」と、第4局への抱負を語っていた。【赤塚辰浩】

◆棋聖戦 将棋の8大タイトル戦の1つ。1962年(昭37)創設。初代棋聖は、故大山康晴十五世名人。94年度までは半年に1回開催されていた。20年に藤井が17歳11カ月で初のタイトル挑戦、初タイトル獲得を果たすまで、屋敷伸之が第55期(89年度後期)で17歳10カ月24日の最年少挑戦記録を保持。次の第56期(90年度前期)で屋敷は18歳6カ月と当時の最年少記録で初タイトル獲得という舞台になっていた。95年度から年1回に。96年度は当時7冠すべてを保持していた羽生善治現九段が今局の対局場となった「高島屋」で三浦弘行現九段に敗れ、6冠に後退した。「棋聖」は将棋、囲碁で抜群の才能を示す者への敬称。将棋では江戸時代末期の不世出の天才棋士、天野宗歩(あまの・そうふ)がこう呼ばれた

【第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負日程】

◆第4局 7月17日、名古屋市「亀岳林 万松寺」

◆第5局 7月27日、静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」