藤井聡太竜王(21)への挑戦者を決める、将棋の第36期竜王戦挑戦者決定3番勝負第2局、永瀬拓矢王座(30)対伊藤匠六段(20)戦が14日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた。対局は後手の伊藤が激しい寄せ合いを制して連勝し、タイトル戦初出場を決めた。竜王挑戦の条件も満たし、七段に昇段した。7番勝負第1局は10月6、7日、東京都渋谷区で行われる。

同学年の藤井が待ち構えるタイトル戦という大舞台へ、伊藤がやっと上がってきた。「実感がわかないというのが正直なところ」と終局後、しぼり出した。デビューは藤井から遅れること4年の2020年(令2)10月。当時、すでに棋聖・王位を獲得したライバルを追いかける「棋士人生」が始まった。昨年の棋王戦挑戦者決定トーナメント準決勝でともに敗退して回った敗者復活戦で、両者が激突した。ようやくタイトル争いに絡んできた。

トップの1組から最下級の6組まであるランキング戦のうち、伊藤は今期5組優勝。決勝トーナメントで出口若武六段、大石直嗣七段、広瀬章人八段、丸山忠久九段、稲葉陽八段と撃破、挑決で現役タイトル保持者を倒し、「竜王戦ドリーム」を実現させた。過去4組優勝から挑戦権を獲得した例は、97年(第10期)の真田圭一、98年(第11期)藤井猛、04年(第17期)渡辺明といるが、5組からは初の快挙だ。

小3時の将棋大会、藤井と準決勝で当たった。伊藤が接戦を制し、敗れた藤井を泣かせた。そんな逸話から、「藤井を泣かせた男」と呼ばれるようになった。「大変強い方ですし、何とか盛り上げられるように頑張りたいです」。プロの世界では差をつけられているが、次は頂上対決で泣かせる番だ。【赤塚辰浩】

【第36期竜王戦7番勝負日程】

◆第1局 10月6・7日、東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」

◆第2局 10月17・18日、京都市「仁和寺」

◆第3局 10月25・26日、福岡県北九州市「旧安川邸」

◆第4局 11月10・11日、北海道小樽市「銀鱗荘」

◆第5局 11月27・28日、香川県琴平町「ことひら温泉 琴参閣」

◆第6局 12月6・7日、秋田県大仙市「旧本郷家住宅」

◆第7局 12月13・14日、甲府市「常磐ホテル」