新型コロナウイルスの変異種「デルタ株」の蔓延で感染者が急増しているロサンゼルス(LA)では、わずか2週間で入院患者数が745人から2倍近い1473人に膨れ上がり、2月下旬以来となる入院患者数を記録し、医療のひっ迫が再び心配されています。デルタ株はワクチン接種者も感染するリスクがあるだけでなく、感染後は他人にうつす可能性もあることが分かっている一方、ワクチンを接種した人は重症化することはまれなため、専門家は現状を「ワクチン未接種者のパンデミック」と表現しています。アメリカは現在、12歳以上の人は誰でも接種が可能なため、政府はより多くの人がワクチンを打つことでコロナからの脱却を目指していますが、ワクチンに懐疑的な人も多く難しいのが現状です。より強力な新たな変異種の出現も懸念される中、ワクチンとイタチごっこの戦いになっており、ワクチン接種を促進するためLAでもついに公共施設でのワクチン義務化案が浮上しています。
ニューヨーク市は全米で初めて、飲食店での店内飲食や映画館、スポーツジムなど屋内の娯楽施設を利用するにはワクチン接種証明を義務付けることが決まり、16日から段階的にスタートさせ、9月13日からシステムを完全導入することを発表しています。レストランの店内で飲食したり、ブロードウェイミュージカルを観劇するには、少なくとも1回の接種が必要で、検査による陰性証明は認められないという厳しいものになるため、未接種者は多くの場面でこれまで通りの日常生活が行えなくなります。観光客も多いニューヨークの取り組みは、観光産業にも影響を及ぼすだけに今後他の都市のモデルケースとなるか注目されます。ワクチン接種率のペースが鈍化していることから接種促進を促す目的がある一方、「ワクチンを打つかどうか決めるのは個人の自由」という抗議の声もあがっており、義務化に反対する人たちによるデモも起きるなどまだまだ課題も山積みです。
ニューヨークと並んでリベラル層が多いLAも同様に、店内飲食や映画館、コンサート会場やスタジアムなど屋内の公共施設でワクチン接種を義務化する案が検討されているとロサンゼルス・タイムズ紙などが伝えています。今後数週間で具体的なシステムの構築や適用範囲などが話し合われることになるようですが、例えばショッピングモールや食料品店など生活必需品の購入も対象とすべきかどうかが今後大きな争点になりそうです。また、義務化によって健康上や宗教などの理由から接種できない人たちへの差別や接種をめぐる分断が深刻化することも懸念されます。LAよりさらにリベラルなサンフランシスコでは、バーの経営者らによるサンフランシスコバー協会は客に対してワクチン接種の証明を義務付けることを決めており、LAでも独自に入店の際の接種証明書の提示を求める飲食店も出始めています。一部企業もリモートから出社に戻るタイミングで従業員への接種を義務づける動きが出ているほか、新学期のスタートを前に教員のワクチン義務化なども検討されており、反ワクチン派にとってはどんどん肩身の狭い世の中になっていきそうです。
ワクチン接種を急ぐ理由の一つが、新たな変異株への対策です。英国の科学者は、ワクチンが効かない新たな変異株の出現はほぼ確実だとするレポートを発表していますが、次々と変異して強力になる変異株に対抗するにはできる限り感染者を減らすことがもっとも重要で、そのためには世界各国でワクチン接種率を上げることが急務となっています。すでに昨年11月にペルーで出現したラムダ株が米国でも確認されており、4日時点でおよそ1300例が報告されています。世界でみると日本を含む41カ国で確認されており、世界的な流行の兆しも見られるだけに米国内でもデルタ株からラムダ株に置き換わるのも時間の問題となっています。
ラムダ株はデルタ株とほぼ同程度の感染力があるといわれていますが、現時点でデータが少ないため、ワクチンの効果や感染をどのくらい防ぐことができるのかは分かっていません。デルタ株はワクチン未接種者が感染した場合は、発熱や継続的な咳、息苦しさなどを訴えるケースが多くみられますが、ラムダ株はより重症化する可能性もあるだけに警戒が必要となっています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)




