鹿島で夏の薫りを感じたぜ! 「オレは釣り人」と自称する「アニキ」こと俳優哀川翔(54)が、茨城・鹿島沖の水深130メートルの海域でヤリイカ釣りにチャレンジした。強風が吹き抜け、高波に揺すられ、春特有の洗礼を浴びながらも10匹をキャッチした。なんと、釣りの終盤には、夏の風物詩ともいえるムギイカが乗ってきた。

 荒れてるね。

 目の前に波の壁ができる。次の瞬間、船がフワリと浮き上がる。さっきまであったはずの波の壁は、谷間になっている。高速のエレベーターに乗っているようだ。内臓をわしづかみにされて、引っこ抜かれる感じ。オレは、こんなのは何でもない。一緒に来た何人かは、船室で転がっている。このどんぶらこじゃ、無理もない。

 でもね、この荒れてる海こそが、豊かな海をつくるんだよ。船が出ることもできないぐらいのときもある。そういうときの海は魚にとって、パラダイスなんだろうな。天を突き刺しそうな波は、ありったけの酸素を海中に引き込んでいる。魚、大喜びだ。ワクワクするだろ。燃えるねぇ~。

 さあ、本題のイカだ。

 鹿島「第三幸栄丸」。いい宿だ。若い船長も威勢がいいし、港に戻ってきてからのカレーライス、これがうまい。おかみさんの「お帰りなさい」のあいさつもシャンとしている。

 ちょっと脱線した。イカだ、イカ。漁場は港から約2時間。深さは120~150メートル。深いねぇ。オモリは150号。重いねぇ。プラヅノは11センチを5~7本。「赤+白」スッテを1本入れるのが鹿島スタンダードだ。

 投入して、底にトン。何度かシャクりを入れて、糸フケをとる。深場に仕掛けを落とす場合、この「トン」を確認しても安心しちゃいけない。流れが何層もあって、極端なことをいうと道糸がぐねぐねと蛇行してしまう。だから何度かシャクりをいれて、道糸を真っすぐにするんだ。

 それと、今回はブランコ仕掛けだったので「何度かシャクる」ことで海中でプラヅノやスッテがフラフラと動いて、流れになびいて、周囲にアピールしてから止まる。イカも「あれ?」となる…はず。フフ、サオ先がグングン。来たな。

 電動リールは超ゆっくり。慌てちゃいけない。イカの仕掛けはカンナバリといって、外に広がった返しのないもの。なぜかイカが抱きついて離さない。それでも、力を緩めたり、サオを上下動させたりすると、返しがないから、するん、と抜けてしまう。それと、早巻きをすると、サバがあいているプラヅノにガツン…そうなると、せっかくついたイカもバレてしまう可能性が高くなってしまう。気をつけよう。

 イカはついていた。最初はスルメイカだった。足が長くて黒い。キモを持っているから、ヤリイカの身と合わせると、うめぇ塩辛が食える。本命じゃないが、幸先がいいねぇ。

 荒れた海なので、アタリが分かりにくい。でも、そういう状況だからこそ、イカをプラヅノに乗せることが重要になってくる。着底してから少しずつサオのしなりを利かせて上げていく。ゆっくりだ。そのうちグングン、グングンと乗ってくる。今度はヤリイカだった。透き通った身にオーロラのような模様が出ては消える。美しいねぇ。これだから釣りはやめられない。

 スルメイカの幼体ムギイカもダブルで釣れたりもした。夏の薫りがしてきたねぇ~。風も暖かくなってきて、海の水の温度も上昇してきて、またいろんな釣りができるようになってきた。鹿島の海、ありがとう。【写真&構成・寺沢卓】

 ▼宿 鹿島「第三幸栄丸」【電話】0299・82・6032。ヤリイカ釣りは、午前4時30分出船、氷付き1万2000円。出船前に仮眠のできる休憩所もありますよ。生きたイカをそのまま持ち帰るパックサービスもあります。