宮城・亘理から耳より情報が届いた。「マダイが網に入っている。釣れるかも」。発信元は「大海丸」の山川育夫社長。宮城県南部でマダイが釣れたら大ニュースだ。経験豊富な漁師が太鼓判を押してくれている。脈はある。そこで、6日に急きょ現地を訪れた。

宮城県亘理港で一番最初に遊漁船を始めたのが大海丸だった。現在も、刺し網漁をする船も操業している。6月下旬、山川社長から電話が入った。

山川社長 刺し網漁でマダイが入ってるんだ。ここらじゃ狙わないけど、何かやれば釣れるんでねぇか。

宮城県の釣りではカレイやヒラメが盛んで、泳いでいるものの、マダイを狙うことは多くない。ただ、とても魅力的だ。今までに釣ろうと思ったことがないのなら、釣りに対する免疫は低いのではないか。

ならば、コマセ釣り、タイラバ、ひとつテンヤ…試してみたくなった。さらにもう1つ「サビキマダイ」。関西地区で主流の釣り方で、胴付き仕掛けでオモリ50号をぶら下げて底まで落として、一定速度で巻き上げる。ハリは5~7本でサバ皮の飾りがしてあるだけで、オキアミなどのエサを掛けなくてもマダイが釣れるという。

がまかつの全国大会G杯の取材で、自慢げにサビキマダイの話題をふってくる他紙の釣り担当記者を思い出した。似たような仕掛けは、西伊豆のイサキ釣りでもあるので、代用品として道具箱に忍ばせた。

夏を目前に控えた今の亘理だが、雨が降るとちょっと肌寒い。それでも「大海丸」は夏ビラメが大盛況だ。港を出て30分~1時間で釣り場に到着する。水深は15~35メートルと浅い。両手で押しつぶせないハンバーガーぐらいの分厚いヒラメが釣れる。全長1メートルの大物も期待できる。

取材をした6日は、上空に雲が立ちこめて、1時間おきに気まぐれな雨がパラついた。釣りにうるさい雨粒ではない。波もうねりはゆるくて、船上では快適に釣りに集中できた。ヒラメは85センチが2匹出た。

関東地区と同じ釣法で、生きたイワシを泳がせて誘う。オモリは60号、底をトントンとたたく釣り方が主流だが、大きいヒラメを釣りたいなら、オモリを着底させてから、50センチ~1メートル浮かして待つ。大きなヒラメはたとえ底にへばりついていても、跳躍力があるため、一気にイワシに飛びつくことができてしまう。

釣れるヒラメを横目で見ながら、大ドモ(船尾)でひたすらマダイを追い求めたが失敗が1つ。付けエサ用はあったが、コマセ用のオキアミを忘れてしまった。アマダイなどは、コマセなしで釣るし、コマセをまけば本命以外が集まりすぎて釣りにならない。そこで、考え方を変え、60号のコマセカゴはオモリとして使った。

しかし、反応がないので、アピール力のあるテンヤ用冷凍エビにタチウオバリ1/0を使ってみた。サオ先がプルルンと振動してアタリはあったが、ハリまで届かずにエビだけちぎられて逃げられてしまった。何かはいる。

テンヤは落とし込み、動きにも緩急をつけたりしたが効果なく、関西地区で人気のサビキも通用しなかった。船を操舵(そうだ)する山川社長の長男大海(たいかい)船長は「活性はちょっと低いかも。マダイとヒラメのいそうな根回りをやってるけどなぁ」と首をひねった。

最後は、平べったいタイラバ80グラムを落として、底を捉えたら。すぐ一定速度で巻いた。4投目にゴ、ゴゴン。軽いけど魚のアタリだ。底から5メートルで食らいついてきた。そのまま巻いてくると31センチのアイナメだった。タイラバ、悪くない。

結局、マダイは釣れなかった。釣果はアイナメだけ、あとオキアミに小さいフグ。そして、エビは食い逃げされた。何かはいる。大海丸では、ヒラメ船でマダイを狙うのは「自由でいい。お客さんみんなと仲良くね」と山川社長は大きく構える。夏ビラメもこれからが本番、そして、何が飛び出すかわからないマダイ狙いは可能性を感じた。

今度は、コマセ用のオキアミブロックを忘れないようにしよう。釣果は不発ではあったが、宮城県南部沖でのマダイ釣りの1歩目は確かに刻まれた。【寺沢卓】

▼亘理「大海丸」【電話】090・2795・8087。ヒラメ乗合船は午前4時30分集合、同5時出船。エサの活イワシと氷付きで1万円。マダイ狙いの乗船もOK。ただし、道具やエサは持ってきてください。ランチは「食事処 大海」で。海鮮丼が自慢。身の厚いマコガレイの煮付け定食もおいしい。港横に宿泊施設あり。詳細は要電話連絡。