釣り記者として終戦記念日を迎えるたびに俳優の故中山昭二さんを思い出す。人気特撮番組「ウルトラセブン」ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長と言えば、おわかりになる方も多いはず。30年ほど前、釣り面に何度か登場してもらった。

「僕はね、生きるために釣りを覚えたようなもんなんですよ」。千葉・金谷「光進丸」でアジ釣りの取材をした時のこと、隊長が釣りを始めたきっかけを教えてもらった。

隊長は食糧となる魚を釣っていたという。「終戦の少し前、本土決戦のため、少年兵として小笠原諸島に送られたんですよ。食糧は現地で補給するしかありません。僕は漁労班長でした」。少し遠くを見つめ、語り始めた。

パリ五輪が終わり、卓球女子団体銀メダル、シングルス銅メダルの早田ひな(24=日本生命)が「知覧特攻平和会館を訪ねたい」と発言。「生きていること、卓球ができることが当たり前ではないということを感じたい」と理由を述べた。

ふっと、隊長がつぶやいた言葉を思い出した。「平和な釣りって、いいよね」。

この時は、アジがたくさん釣れた。かじを取っていた今は亡き岡澤淳一郎船長がカッタクリ(イナダの手釣り)の仕掛けを出し始めた。「隊長、やってみるかい?」。隊長は鮮やかな手さばきで5回仕掛けを入れ打率10割。見事にイナダを食わせて取り込んだ。「あんた、道を間違えたんじゃないの?」。岡澤のおとうちゃんのどら声が東京湾に響いた。

いや、それよりもこの国が2度と道を間違えないでほしい。釣りでもスポーツでも、当たり前のことを当たり前に楽しめる世の中であり続けてほしいと願うばかりである。