人気特撮番組「ウルトラセブン」でウルトラ警備隊のキリヤマ隊長役だった中山昭二さん(敬意を込めていつも「隊長」と呼んでいたのでここでは以下、隊長と表現します)は、昭和の芸能界で指折りの釣り好きだった。釣りの取材に同行した30年ほど前、隊長は日光江戸村(栃木)の芸能師範として、時代劇役者を志す後輩たちに演技や所作の指導をしていた。東京で打ち合わせをする時や、江戸村のロケ現場で顔を合わせると、「リキさん(大原「力漁丸」の中井力男船長)のとこでヒラメがやりたいねぇ」と、よく言われた。
そんな隊長は、船に乗ってサオを出す時に決まってツバがこれでもかと広い麦わら帽子をかぶり、首からタオルを巻き、必ず長袖のシャツを着ていた。どんなに暑くても、肌の露出を極力避けていた。あるとき、「隊長、暑くないんですか?」と尋ねた。
隊長からは、こんな答えが返ってきた。
「時代劇の役者にとって日焼けは大敵です。ヅラ(かつら)をかぶるのにサングラスのフレームの跡がついているとか、着物なのに腕時計の跡をついていたり、二の腕から下だけ肌が黒かったりしたら不自然でしょう。芸能師範として示しがつきませんから」。
納得した。肌に触れると冷える「接触冷感」の素材がある今とは違う。いやぁ、根っからの役者さんなんだと、痛感させられる自分がいた。

