「肝がん」を死因とする人は年間3万人以上。その約8割は、B型肝炎やC型肝炎などの「ウイルス肝炎」が原因だ。こうした肝炎ウイルスの感染の中に、「性行為」による感染例が少なからずあることが知られているが、あくまでもその一部。「ウイルス肝炎=性感染症」と早合点すると誤解のもとなので、注意してほしい。

 肝炎に詳しい東京医科歯科大学消化器内科「肝炎・肝がん撲滅外来」の朝比奈靖浩教授は、「感染経路からいって、すべてのウイルス性肝炎が性感染症の中で大きなウエートを占めているわけではありません。しかし、B型ウイルスによる急性肝炎では、その約9割が性行為に伴うといわれていますから、予防意識が必要だろうと思います」と指摘した。

 肝炎を起こすウイルスは、A~E型の5つ。主にB型とC型が、血液や体液を介して感染する。ウイルスや細菌を体内にもっている人を「キャリアー」といい、日本のB型肝炎キャリアーは130万~150万人。そのほとんどが3歳以下で感染していて、出産時の母親からの母子感染もある。

 キャリアーのほとんどは症状のない無症候性だが、慢性肝炎から肝硬変、肝がんになる人も一部にいる。一方、大人になってからの感染は「一過性感染」と呼ばれ、急性肝炎になる人が20~30%いる。

 「ウイルス肝炎は病態として、急性肝炎と慢性肝炎の2つに分けられます。急性肝炎はウイルスの一過性の感染により引き起こされますが、劇症化することがなければ治癒していきます」(朝比奈教授)。