B型急性肝炎のウイルスに増えている遺伝子型「ゲノタイプA」。肝炎に詳しい東京医科歯科大学消化器内科「肝炎・肝がん撲滅外来」の朝比奈靖浩教授はこう話す。

 「B型肝炎ウイルスの遺伝子型のうち、現在にいたっては、約半数が“A”という状況です。本来はあまり存在していなかったゲノタイプがまん延しているということで、海外から入ってきたものが広がったと考えられています」

 本来は欧米に多い「ゲノタイプA」。当初は男性の同性愛者間での感染が際立っていたが、そうした特徴は次第に薄れ、現在は異性間でそのまん延が指摘されている。性行動の“グローバル化”が影響しているのか!?

 「ゲノタイプAのウイルス肝炎は、他のゲノタイプに比べて、慢性化率が高く、実に約10%の人が慢性化してしまいます。かつては急性肝炎からの慢性化は1~2%といわれていたので、その差は非常に大きい」(朝比奈教授)。

 ゲノタイプAに感染していても症状のないことが多く、ウイルスが消えていない状態では、性行為を通じてさらに感染を広げてしまう危険がある。

 まずは急性肝炎の症状に気をつけよう。だるい、尿の色がウーロン茶や紅茶のように濃くなる、食欲不振、黄疸(おうだん)など、普段と違った症状がある。血液検査の数値の変動などは、慢性化の早期発見に役立つ。

 朝比奈教授はこう指摘する。「通常、急性肝炎は劇症化しない限り、特別な治療は必要ありません。ただし、劇症肝炎の危険がある場合は、抗ウイルス療法、肝補助療法、場合によっては肝臓移植の適応も考えなければいけません」。