夜間頻尿に関して、怖いデータが出ています。

 米国泌尿器科学会では、夜間2回トイレに行く人は死亡率が1・6倍になると報告されているそうです。この報告、実は日本での研究結果を基にしたものであり、米国人ではなく日本人の話です。単に加齢による頻尿というだけではなく、心疾患、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、腎疾患などなど、その背景にあるものはたくさん指摘されているようです。

 東北大学医学部泌尿器科の研究チームは、「夜間、トイレに行く回数が多い高齢者ほど死亡率が高い」という、衝撃的な調査結果を発表しています。その研究によれば、夜間の排尿回数1回以下の人を1とした場合、2回の人では死亡率が1・59倍、3回の人は2・34倍、4回以上の人になると3・60倍にまで高まるそうです。しかしながら、夜間にトイレに行かなくても済むようにと、就寝前の水分を控えるのも危険です。脱水をきたしやすくなり、その結果、血液の粘度が高まり、血管が詰まりやすくなるため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まってしまいます。

 また、こんな報告もあります。夜間頻尿の人には、夜暗い時に寝ぼけがちにトイレに行こうとして転倒し骨折するリスクが高くなるといわれているのです。東北大学・中川晴夫医師らの報告では、2回以上の夜間頻尿の人は、そうでない人に比べて転倒による骨折のリスクが約2倍増えるとされています。

 予防策として、山梨県立大学などの研究を紹介します。夕方10分間の「足湯」で夜中に起きる回数が減少したそうです。夜間頻尿は足のむくみが原因になっていることもあり、昼間、足にたまっている余分な水分が、寝ている間に血管内に流れ込み、尿となって排出されることが夜間頻尿を引き起こす1つの仕組みです。そのむくみを「足湯」で寝る前に改善しておけばいいということなのです。

 厚労省の「国民生活基礎調査(平成22年調べ)」を基にした「頻尿が最も少ない県ランキング」では、1位群馬県、2位茨城県、3位山梨県という結果が出ています。群馬県民に頻尿が少ない理由としては「温泉でよく温まるから」。同県には高温の源泉かけ流しの温泉が多く存在。温泉でぼうこうの血流量がアップすると、おしっこを感知するぼうこうの神経が正常に働くため、過敏に尿意を感じることがなくなる仕組みです。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。