感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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「SARS(重症急性呼吸器症候群)」コロナウイルスは、2002年から03年に中国の広東省から始まり、世界29の国に拡散しました。死亡率は約11%とされます。「MERS(中東呼吸器症候群)」コロナウイルスは12年に、サウジアラビアで発見され中東全域および中東からの帰国者からも報告されました。報告では死亡率は約35%です。

ウイルスの伝搬は飛沫(ひまつ)もしくは汚染表面の接触によるものとされます。これらのウイルスは便にも含まれ、下痢を起こします。

SARSには計1706人の医療従事者が感染し、MERSでも医療施設内におけるアウトブレーク(集団発生)が観察されました。医療従事者が感染するリスク因子として、感染対策として基本的な手指衛生が不十分だったこと、個人防護具の不適切な使用(N95マスクの再利用など)、リスクの高い患者のケア(適切な防護具なしでの気道操作)などが挙げられます。

患者から医療従事者が感染する最大のリスク行為は、気管挿管の直前にSARS患者をケアし、エアロゾル化した気道分泌物に暴露されたことでした。

SARSの潜伏期間は2~10日間。症状は発熱に続いて、気道症状が出現します。気道症状は典型的には乾性咳嗽(がいそう=乾いたせき)から始まり、呼吸困難が出現し、胸部エックス線での肺炎像が認められるようになります。

MERSの潜伏期間はおよそ5日。症状は全くない場合もありますが、軽度の呼吸器症状から、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とするような重篤な肺炎までさまざまです。他の症状として、心外膜炎、腎不全、播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)、下痢などがあります。基礎疾患のある患者では重症化のリスクが高いと思われます。

SARS及びMERSともに診断は下気道検体に対するRT-PCR(わずかなRNAをDNAに変換して検査可能な量に増幅させる)検査が最も感度がいいでしょう。時間、部位を変えて複数検体を採取することでウイルス検出率が上がります。

「ELISA」(抗体や抗原の濃度を検出、定量する際に用いられる方法)を用いた血清診断は、3週間で陽性化します。ウイルスに対するワクチンや特異的な治療法はなく、支持療法が中心です。つまり、今まで言われている新型コロナウイルスの特徴は、今までのコロナとほぼ変わらない、ということなのです。

◆若杉恵介(わかすぎ・けいすけ)1971年(昭46)東京都生まれ。96年、東京医科大学医学部卒。病理診断学を研さん後、臨床医として血液内科・院内感染対策・総合診療に従事。各病院で院内感染管理医師を務める。今年3月から現職の河北総合病院血液内科副部長。趣味は喫茶店巡りと古文書収集。特技はデジタル機器修理。