<医療現場から見た冠状病源(新型コロナ):コロナ対応医療チーム>感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

    ◇   ◇   ◇

中国当局は、武漢にたった10日ほどで1000床規模の医療施設を2カ所造りました。公開された動画でもなかなかの出来栄えでした。どのような運用がされたかわかりませんが、現在は役目を終えて解体されています。

日本ではこのような施設を短期間で簡単には造れそうにありません。特に首都圏などは土地のスペースがまずなく、周囲には住宅密集地もあり、医療施設建築の許認可事項等の障害もあります。もちろん10~20床程度の設備は駐車場などのスペースに造れるかもしれませんが、配管や排水の問題もあり不便でしょう。

臨時施設としての既存の施設利用も、それに伴う影響を考えると対応が難しいようです。その点で、いくつかのホテルチェーンに軽症者の対応をしていただいたのは、病院として非常にありがたかったです。

「コロナ専門病院」や「専門施設」があると助かる、造るべきだという考えもありますが、運用は難しそうです。まず人員がいません。また集まった人間がいきなりチームを組むのは難しいです。災害派遣医療チームの「DMAT」は会合など訓練を受けていますが、感染対応派遣チームはそれほど準備はされていません。また専用施設、病院を管理運用する人材もいないのです。

もともと発熱外来及び発熱対応入院の8割方は、新型コロナ陽性者ではないのです。集約化したほうが、余計無駄が多くなるのです。医療現場はコロナの治療よりは、「コロナ疑い」の方の対応で逼迫(ひっぱく)しているという状態です。病床対応も新型コロナ陽性確定者はベッド数から個室隔離が困難で、もはや集団隔離もやむなしの状態ですが、「疑い」の方は感染させられないように、かつ感染させないようにするため個室対応が必要です。

それよりむしろ「専用検査センター」は、造っていただきたいです。ただ、現状では検査センターに行ったことが感染のリスクになってしまいそうな状況です。検査した結果を電話で教えるのも医師の仕事ですが、時折結果や対応、特に待ち時間などに文句を言われたりして、とても気持ちが下がることが多いです。