成人の半数以上が罹患(りかん)しているとされる歯周病ですが「歯科医院で定期的に歯石を取ってさえいれば問題ない」と思い込んでいる患者さんがまだまだ少なくありません。この数十年で歯周病の研究が劇的に進み、病因論(歯周病を引き起こす因子の捉え方)が時代とともに変わってきた歴史が関係しています。

歯石除去により炎症を起こした歯ぐきが改善してくることがわかった1930年頃、「歯周病治療は歯石除去から」という考えが広まりました。ところが1960年頃には歯石よりも歯垢(しこう=プラーク)の方が悪さをすることが明らかになり、「ブラッシング状態を改善するための指導」が治療の中心になりました。セルフケアが適当であれば歯周病は一向によくならない、主治医は患者さん自身でもあるという考え方です。歯垢を赤く染め出し、歯ブラシの当て方を教えてもらったという記憶のある方も多いのではないでしょうか。

歯石自体が強い病原性を持つことはないものの、歯や歯根の表面にざらざらした部分があると汚れや細菌の塊がとどまりやすく、歯垢がさらに停滞する環境になってしまいます。つまり現代では、セルフケアの効果を最大限に発揮させるために歯石を取るというコンセプトなのですが、臨床の現場ではまずこの点をしっかり理解していただくことが治療の第一歩になります。

健康な歯ぐきは引き締まっているため歯石が入り込む隙間がありません。歯ぐきがぶよぶよしている期間が長いとその分汚れも年季が入っています。こうしたケースは局所麻酔をして歯石を取っていきます。外敵がいなくなれば体は健康な状態に戻る力を持っていますので、障害物がなくなるまでくまなく観察し診ていく、根気のいる治療になります。