大腸がんの患者さんが「間違った思い込み」で苦しまれたケース。前回に続いて、今回は2例目で、「血便を勝手に痔(じ)だと思って失敗した」ケースを紹介します。痔だと思い込んでしまう人は決して少なくありません。

B男さん(60代)はご夫婦で受診されました。B男さんは肛門に近い直腸に5センチのがんがありました。ただ、早期の直腸がんだったので外科手術をすることなく、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」で治療ができました。運が良かったと思います。

B男さんは、1年前から時々お尻から出血がありました。「私は痔持ちだから…」とB男さんはいうのです。そこで「肛門科を受診して診断されたのですか?」と聞くと、「何となく…」という返事。B男さんの場合、お尻から便が出たときに何かちょっとヒリヒリ感があるので、痔持ちと勝手に思っていたのです。自分で勝手に痔に違いない、と思い込んでいただけなのです。そして、奥さんから「だから、あの時病院へ行きなさい、といったでしょう」と厳しい言葉が出て、夫婦げんかが始まることもあります。B男さんのように実際にがんが見つかり、それも内視鏡で治療ができたケースでは、結果説明の最終外来日に私の診察室から帰っていく時の言葉がほぼいつも同じです。

その言葉は、「先生、ありがとう。これからは、必ず内視鏡検査を受けます」と。受診した初診日と同じスタイルで帰られますから、喜びいっぱいです。私からは、「今回がんを見つけてくださった先生に感謝して、1年後にはその先生の内視鏡検査を必ず受けてくださいね」と言います。

「痔なのかなー」と思ったら、自分で勝手に決めないで、必ず内視鏡クリニックで診てもらいましょう。そして、痔があったとしても、その奥はわかりませんので、大腸内視鏡検査も受けるのが重要です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)