医師になってちょうど50年になります。たくさんの死に立ち会ってきました。
「心臓が止まりかけたら心肺蘇生をしましょうか?」と聞くと「もう十分生きた。ややこしくなるから余計なことはしないで」という人や「死は人生最大の冒険」と“棺おけに後悔を持ち込まない”人たちを、たくさん見てきました。「うまいこと死ぬためには、うまいこと生きることが大事なんだ」ということに気がつきました。「うまいこと生きる人は老い方上手だ」ということもわかりました。
【いつか必ず死ぬと覚悟しよう】
80代の肺がん患者さんから大事なことを教わった。彼が喀血(かっけつ)をしました。すぐ止血剤を出そうと思った主治医に「いらないよ。ぼくは肺がんの末期、少しぐらい血が出ても不思議じゃない」という。その後の回診でぼくは聞きました。
【人生に納得する】
「いま起きていること、すべてを納得しているんですか?」ニコニコしながら、彼はうなずきました。
「人生に後悔はないのですか?」すると彼は、ニコっと笑ってこういいました。
「コウカイは海でするもんだ」。ダジャレが命の最後の時に出るとは…。病室中が大笑いになりました。家族も本人もこのひと言で、彼の人生で起きていることを、すべてを見事に受け入れたのです。
「うまいように死ぬ」(扶桑社)という本を書きました。鎌田流上手な人生のしまい方です。

