「うつ症状」に対して「テストステロン補充療法」は有効か否か-この点については、「有効」という医師もいれば、「効果ナシ」という医師もいて、意見が一致していません。ただ、2019年の米国の医師会雑誌には「テストステロン補充療法でうつ症状は軽減する」と発表されています。
うつ病は憂鬱(ゆううつ)な気分や意欲の低下などの精神症状、さらに食欲不振、疲労、不眠などの身体症状が2週間以上続く状態です。私の経験上、典型的なうつ病にはテストステロン補充療法の効果は薄い感じを受けます。ところが、うつ病の1歩手前のうつ症状の方々には、テストステロン補充療法は有効なことが多いのです。
うつ病1歩手前のうつ症状とは、「気分変調症」。気分変調症は、長期間抑うつ状態が続くけれど日常生活にそれほど支障はない、という状態です。このような患者さんには、テストステロン補充療法と抗うつ薬の併用で、かなりの有効性が出ていることが多い。もちろん、テストステロン補充療法単独で精神症状が軽減される患者さんもいます。
精神科医と私とで行った調査では、抗うつ薬の中にはテストステロン値を低下させる薬もあります。薬によるテストステロンの減少がメンタルに影響している可能性もあります。このような場合、テストステロン補充療法を行いながら抗うつ薬を使っていると何が良いかというと、抗うつ薬の量をあまり増やすことなく治療ができる点です。
うつ症状が軽快している患者さんの次の段階は、抗うつ薬の減量や中止です。しかし、抗うつ薬の急な中止は、イラつき、不眠、不安などの離脱症状を起こします。そういう時に、テストステロン値の低い患者さんに補充療法を行うと、比較的スムーズに減薬できることがわかりました。
そして、うつ病の患者さんにお伝えしておきたいことがあります。うつ病の患者さんでは日常生活を送ることも非常につらく、希死念慮(きしねんりょ)が強いケースもあります。まずは精神科を受診して治療を受け、精神科医の判断で男性更年期外来の私たちも入るという合同診療が良いと思います。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

