戦後80年。戦後の治療薬開発まで、治療困難とされた病気をご存じだだろうか。「結核」だ。結核菌が混じった空気を吸い込んで空気感染する。特に免疫力が低下していると肺で結核菌が増殖し、肺を壊すなどして多くの人の命を奪ったのだ。とはいえ、ワクチンや抗結核薬の開発などで、1950年には年間約43万人だった新規結核患者数は、現在では約1万人にまで減少した。医学の進歩は目覚ましいが、封じ込められない別の細菌もいる。
「結核菌が属する抗酸菌というグループでは、非結核性抗酸菌(NTM)による肺の感染症が、近年右肩上がりに増えています。結核の治療は平均半年程度ですが、肺NTM症は平均18~19カ月かかります。長期間の治療でも、NTMが肺から消えない人もいて、治療が困難を極めるケースは珍しくありません」と、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸器センター治験管理室長、臨床医学研究科長の森本耕三医師は警鐘を鳴らす。
「結核は人から人へ感染するため感染症法で2類感染症に分類され、患者の届け出義務があります。NTMは人から人へは感染しないので感染症法の分類はなく、長らく実態が不明でした。2014年の全国の呼吸器疾患拠点病院の調査で、初めて結核を上回る肺NTM症の患者数が判明したのです」(森本医師)
NTMが肺に感染すると、ゆっくりと増殖して肺を壊していく。中高年やせ形の女性や、肺に病気がある人は特にリスクが高いことが分かっている。せきや痰(たん)が続くようならばかかりつけ医などの医療機関へ受診を。「肺NTM症も早期発見と適切なマネジメントが大切です」と森本医師は話す。

