近年、世界的に患者数が増えている肺の病気に、肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)がある。NTMは河川や土壌といった自然環境に生息するありふれた菌群だが、人間の肺に感染すると治りにくく、月日をかけて肺が壊されてしまう。国内の患者数は推定24万人。

抗酸菌の仲間に分類される結核は、年間約1万人の新規患者数がいるが、治療を適切に行うことで半年程度治ることが多くなったという。では、肺炎球菌などの肺炎と、結核や肺NTM症の違いはなにか。

「肺炎は肺の炎症で肺に限定されますが、結核菌は骨や関節、腸管など肺以外の臓器にも症状が及びます。NTMも肺以外の臓器に感染します。不衛生な環境でのアカスリや入れ墨、外傷、骨が皮膚の外に出る開放骨折などによるNTMの感染は報告されてます」と、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸器センター治験管理室長、臨床医学研究科長の森本耕三医師は解説する。

肺炎の原因のひとつ肺炎球菌は、唾液に含まれ飛沫(ひまつ)によって肺に感染し炎症を起こす。一方、結核は空気感染によって肺に侵入し、そこに増殖するだけでなく、他の臓器にも広がる。首やわきの下のリンパ節や、背骨、腎臓、さらには脳などを侵すこともある。

NTMも、肺の感染が圧倒的に多いが、皮膚に感染して膿(うみ)がたまって腫れ、全身に発疹が出るようなこともあるという。また、結核と同様に骨などにも感染する。

「肺以外のNTM症の実態は調査中です。まだよくわかっていないことが多い。多くの人が関心を持って実態解明の後押しをしていただければと思います」と森本医師は話す。