心房細動の発生源は肺静脈であり、肺静脈から心房に移り、心房が変形することを話してきました。1990年代終盤から肺静脈のアブレーションが始まって30年が経過しています。治療時間が短いことと合併症を起こすリスクが低いこともあり冷凍バルーンなどバルーン型カテーテル治療が流行っています。ところが、肺静脈の治療に終始しても長期的な回復は70%台と上がりません。プラスαの治療が必要なのです。
左心房や右心房の複数の発生源や心房細動の素地となる電気の漏電部分をアブレーションするなどの治療でが、専門医でもかなりの経験値が必要になります。いまだ発展途上と言えます。
また、心房細動のアブレーション後の治療では、定期的なフォローが欠かせません。心房細動の程度に応じて、時に抗心不全薬や抗凝固薬(血液サラサラ薬)の継続を必要とします。けれどもサラサラ薬で出血しやすい体質の人や腎臓の機能が悪くて内服できない場合、さらに飲んでいても脳梗塞を繰り返す場合には、カテーテルで左心耳(さしんじ)内に金属の網を突っ込む閉鎖術や外科手術で左心耳を切除したりします。
左心耳とは、左心房の壁の一部が耳のように突き出た袋状の部分です。大腸で言えば虫垂のような盲端の部分にあたり、ここに血栓ができやすいのです。心房細動ではどうしても忌み嫌われる存在ですが、簡単に切除すればいいわけではありません。決して無用の長物ではないからです。いったん脈が正常となると心臓のポンプ機能を滑らかにし、心不全を予防するホルモン(hANP=ヒト心房利尿ペプチド)を分泌する大切な器官なのです。
左心耳切除術も閉鎖術も治療により血栓リスクは激減しますが、左心耳の機能が失われてしまいます。適切かつ慎重に治療を進める必要があります。

