“肺がんは怖い!”という気持ちは、誰もが持っていると思います。しかし、肺がんであっても早期に発見できれば、助かります。そういう患者さんのケースをご紹介します。
私の頭に浮かんできた強く印象に残っている患者さんは、20代前半のA子さんです。A子さんは職場検診で右肺の下葉に異常陰影を指摘され、胸部CTを撮ってもらうと、肺腫瘍の疑いで経過観察に-。3カ月後のCTでは約1センチのすりガラス陰影の内部に充実成分が出現し、その医師は「若い女性なので、この段階であれば、臨床研究中であってもロボット手術(現在は保険適用)が良い」と判断。そして、私を紹介されたのです。
私はA子さんのすりガラス陰影を診て、「肺腺がん」を疑い、まずはPET検査(がんが全身のどこにあるかが分かる検査)を行いました。結果、確かにがんが疑われました。A子さんのがんが疑われる場所は、右肺下葉の真ん中の部分だったので、診断をつけるために区域切除をすることとし、了解を得ました。
女性の場合は、ロボット手術でも乳房の周囲の膨らみ始める部分にメスを入れて、傷が目立たないようにします。そして、肋骨(ろっこつ)の間から肺がん部分を取り出しました。すぐに病理で顕微鏡検査をすると、肺がんとわかりました。それで、肺内のリンパ節も縦郭リンパ節も切除して顕微鏡検査をすると、いずれにも転移はなく「1A1期」で最も早期でした。
手術後、「肺がんでしたよ」とA子さんに言ったとき、A子さんは「手術前、先生から言われた時に覚悟はしてました」と、慌てることなく応えました。
身体に優しいロボット手術だったので、1週間後に退院でき、自宅で2日程度安静に過ごされた後、仕事に復帰されました。すでに術後5年が経過し、再発・転移もなく元気にお過ごしです。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

