すごい試合だった。カーリング女子の準決勝、延長までもつれ込む死闘は、間違いなく冬季オリンピック(五輪)の名場面になる。この試合で、またファンが増えたはず。負けたけれどもう1試合、24日の英国との3位決定戦も日本中が注目するはずだ。

 今大会は「カーリングの五輪」だ。地上波テレビの生中継は女子が3決を入れて11試合、男子も8試合。1試合2時間半として、合計で50時間近くになる。すべてを見ると2日間「ヤップ!(スイープを指示する掛け声)」や「そだね~」を聞いたことになる。

 今大会はフィギュアやスノーボードが午前中に行われ、ジャンプなどは夜遅かった。カーリングは天候に左右されず、競技時間も安定している。さらに「もぐもぐタイム」など競技以外も注目される。「フィギュアやジャンプがだめなら」と、テレビ局がゴールデンタイムの中継にカーリングを選んだのもよく分かる。

 一瞬で転倒などある競技は見ていて力が入るが、カーリングは肩の力を抜いて見ていられる(準決勝は力が入ったけど)。選手には申し訳ないが、食事や酒を飲みながら楽しむのにちょうどいい。ルールも適度に難しいが、少し知れば分かりやすい。大会中、テレビ前の「評論家」も増えた。

 30年以上前、初めて東京で行われたカーリング大会を取材した。北海道・帯広市の東光舗道のOLが92年アルベールビル五輪(公開競技)に出場する5年も前だ。「カーリング」の名も初耳だった。フィギュアの聖地・品川アイスアリーナで、試合開始は午前2時。一般営業の合間だった。

 当時アリーナ責任者だったプリンスホテル・マーケティング部の飯田広文氏は「こっちは氷を作るプロだけど、ちんぷんかんぷんでしたね」と話す。普段は氷面をツルツルにしているのに、ペブル(氷の粒)を作ることに戸惑ったのかもしれない。それが、今や冬季五輪の花形競技になった。

 各地のカーリング場は体験希望者が殺到しているという。五輪効果は大きい。が、長続きもしない。北海道や長野など局地的には盛んだが、全国的にはマイナー競技だ。現在、日本カーリング協会に所属する都道府県協会は24。47に増やすことが「4年に1回の競技」からの脱却につながる。英国との3決、メダルを獲得すれば「記憶」だけでなく「記録」にも残る。【荻島弘一】