安倍晋三前首相(66)が19日、日刊スポーツの単独インタビューに応じた。新型コロナウイルスの影響で東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの1年延期を決断した背景として、対国際オリンピック委員会(IOC)や対選手を考慮し、「中止だけは避けなければならない中で1年が限度だった」と述べた。首相退任により10月から約8年ぶりに復帰した全日本アーチェリー連盟会長としての熱い思いも語った。【聞き手=平山連、三須一紀、近藤由美子】

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10月1日から全日本アーチェリー連盟トップに復帰した安倍会長は、成蹊大時代に体育会アーチェリークラブで4年間、活動に打ち込んだ。競技の魅力を肌で実感している同会長の存在は、来夏の東京五輪を目指す選手にとっても心強い。

大学では運動部に入ろうと思っていたという安倍会長は「みんながゼロからスタートできるスポーツはないかと考えたとき、アーチェリーと出合いました」。4年間、多くの時間をささげた日々を「なかなか成果が出なくても練習を続け、試合に出たり出なかったり。必ずしも努力が報われたわけではないですけど、困難に直面した時に必要な我慢強さを持てました」と懐かしそうに振り返った。

政界進出後、連盟の会長職への打診があった。「競技を経験した私が会長をやるのはいいのではないか」と05年に就任。国務大臣は公益法人の役職を兼務できないため、首相在任中は休職していたが今回、約8年ぶりの復帰となった。

東京五輪代表最終選考会は来年3月、五輪会場となる東京・夢の島公園アーチェリー場で開かれる。12年ロンドン五輪男子個人銀メダルの古川高晴(36=近大職員)、同五輪女子団体銅の早川漣(33=デンソーソリューション)ら男女各5人で争われ、上位各3人が代表に内定する。

「日本は男女共に有望な選手がいます。自国開催ということでホームでのメリットがあるかもしれませんけど、同時に大きなプレッシャーもかかる。プレッシャーに打ち勝ってきた選手たちばかりですので期待しています」

ロンドン五輪以来のメダル獲得へ、頼れる会長が選手を全力サポートする。

◆安倍晋三(あべ・しんぞう)1954年(昭29)9月21日、東京都生まれ。成蹊大法学部政治学科卒業。38歳で衆議院議員初当選。03年に自民党幹事長となり、05年第3次小泉改造内閣で内閣官房長官として初入閣。06年9月に戦後最年少の52歳で第90代首相になったが、翌年に辞任。12年12月に再就任し、任期途中の今年9月末に辞任。第2次政権発足後からの連続在任期間は2822日となり、佐藤栄作元首相(2798日)を抜き歴代1位。第1次政権を含めた通算在任日数も3188日で憲政史上最長。