東京オリンピック(五輪)・パラリンピックで世界中のメディア基地として利用される東京ビッグサイト(江東区)について日本展示会協会は8日までに、展示場としてさらに1年間利用できなかった場合、13万社以上ある業界全体の売り上げ損失が4兆円に上るとし、多くの関連企業が倒産する恐れがあると懸念を表明した。延期に伴う会場の再確保問題でついに、くすぶっていた火種が表面化した。

東京ビッグサイトは大会中、国際放送センター(IBC)、メインプレスセンター(MPC)として利用される。特にIBCの改修工事は長期間を要するため19年4月から開始。仮に今の工事を取りやめて解体し、会場を変更すれば来年の本大会に間に合わなくなる。

日本展示会協会は当初通り、20年12月からビッグサイトの全館使用を望んでいるが、取材に応じた同会の迫宏治副会長は「会場の変更は難しいことは分かっている。だからこそ首都圏に別の仮設展示場を建設してほしい」と切に語った。

同会の試算によると、さらに1年間、ビッグサイトが展示場として使えない場合、19年4月から計32カ月で約13万社が影響を受け、売り上げ損失が約4兆円になる。20年7月に五輪が通常開催されていたとしても20カ月もの間、同所を使用できなかったことに加え、新型コロナウイルスの影響も受け同業界は甚大な損失を被っていると主張した。

同会は3月31日付で要望書を作成。その中でIBCが使用する東展示棟・東新展示棟の約6万7000平方メートルと同等の広さを持つ仮設展示場を、首都圏に建設することを求めている。

さらにビッグサイト西・南棟、隣県の幕張メッセを展示場として使用可能にすることを要望。仮にこの要望が通れば、西・南棟を使うMPC、幕張メッセを使う五輪競技(レスリング、フェンシング、テコンドー)、パラ競技(ゴールボール、シッティングバレーボール、テコンドー、車いすフェンシング)の会場移転を伴うことになる。

大会組織委員会は、当初計画の全会場を延期後も使用したい考えを示しており、考え方は対立する。

20年12月以降で既に、ビッグサイトを予約している展示会は多数あるという。五輪延期に伴い、それら展示会が中止や変更を余儀なくされた場合の補償も要望書では求めている。そうなれば組織委や東京都にさらなる経費負担が発生する。晴海の選手村(中央区)とともに、会場の再確保問題で交渉が難航すると予想されていたビッグサイトに、大きな課題が突きつけられた。【三須一紀】