好記録ラッシュとはならなかったが、2種目で今季世界最高(タイ)がマークされた。男子200メートルはノア・ライルズ(20=米国)が19秒69で優勝し、“ポスト・ボルト”争いで先頭に立った。最後の周回でアクシデントが起こった男子5000メートルは、ビルハヌ・バリュー(22=バーレーン)が13分01秒09で優勝した。

 男子200メートルの前半をリードしたのは、100メートルでも今季世界最高タイを持つライルズではなく、400メートルの今季世界最高を持つマイケル・ノーマン(20=米国)だった。「最初の60メートルは最高だったし、90メートルまで良いペースを維持できた」とノーマン自身もレース後に話した。

 だが、残り50~60メートルでライルズが逆転し、終盤で0・19秒差をノーマンにつけた。ライルズはダイヤモンドリーグ3戦目の出場で3戦全勝。2位との差もドーハとローザンヌは約2メートル、ユージーンでは4~5メートルと、3大会とも力の差を見せつけた。

 「19秒69は素晴らしいタイムだけど、まだまだ成長することができると感じている。自分にリミットを設定したくないからね。昨日の会見でアイコン(陸上界の象徴)になりたいと話したけど、着実に記録を出し続けることは、そこに向けての確かなステップだ」

 200メートルの“ポスト・ボルト”争いをライルズがリードし始めた。

 男子5000メートルでアクシデントが起きたのは、残り160メートル付近だった。先頭を走るヨミフ・ケジェルチャ(20=エチオピア)を、外側からセレモン・バレガ(18=エチオピア)が抜こうしたときに両者が接触。ケジェルチャが大きくバランスを崩して転倒したが、その際にバレガのランニングパンツの裾を引っ張りバレガも大きく減速した。

 その間に3番手を走っていたバリューが先頭に立って逃げ切った。バレガは2位に入ったが、ケジェルチャは失格となった。適用された競技規則125条-5は、審判長が不適切な行為と判断するケース。バレガのパンツをつかんだこと(執拗(しつよう)につかんでいるようにも見える)が妨害行為と見なされたようだ。

 だがケジェルチャにしてみれば、バランスを崩したのは後方を走っていたバレガが接触してきたからで、パンツをつかんだのは倒れないために反射的に出た行為だったのかもしれない。レース後にバレガが歩み寄り友好的に先輩ランナーの腕を取ったが、ケジェルチャはその手を振りほどいた。

 エチオピア選手同士の遺恨が、残らなければいいのだが。

◆今季の男子5000メートル

 6月のダイヤモンドリーグ・ストックホルム大会ではバレガが優勝し、バリューが2位。バレガの優勝タイムの13分04秒05が今季世界最高だったが、ローザンヌ大会の1~4位がそれを上回った。

 モハメド・ファラー(35=英国)が昨年のロンドン世界陸上を最後に、マラソンなどロード種目に専念し始めた。五輪&世界陸上の金メダル10個を獲得したスーパースターがいなくなり、男子5000メートル・1万メートル2種目でも後継者争いがスタートしているのだ。

 今季は2年前のU20世界陸上優勝者のバレガに勢いがあり、3000メートルでもユージーン大会優勝時に今季世界最高をマークした。

 昨年の世界陸上はケジェルチャが4位で、バレガが5位。ケジェルチャにとって2つ年下のバレガは、勢いづかせたくない相手である。